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「痛み日記」をつけると、自分の法則を把握しやすい

 佐藤医師も田中さんが言うように、天気と体調の関係、ある種の規則性を知ることが、天気痛脱出の第一歩だと話す。つまり、痛みが起きる自分なりの法則を把握するのだ。

 それを見つけるのに役立つのが「痛み日記」である。記録するのは、天気、気圧の変化、日記(感じたストレス、めまい、耳鳴りなど)、痛みの強さ(11段階評価)、運動、睡眠(3段階)。「頭痛ーる」というスマートフォンアプリもあるので、それを活用してもいい。頭痛の人以外でも使えるアプリだ。

 では気になる治療法だが、佐藤医師がよく処方するのは抗めまい薬である。肝心なのは飲むタイミングなのだが、それを探るときに役立つのが、さきほどの痛み日記。たとえばめまいや耳鳴りといった、痛みが現われる予兆の症状が出たら、先回りして薬を飲んでおくのだ。抗めまい薬と五苓散などの漢方薬を併用することで改善したケースもある。

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「抗めまい薬には神経の興奮を抑える作用もありますが、この二つの薬に共通しているのは、内耳の循環をよくし、いわゆるむくみをとることです。内耳の敏感さと、むくみには関係があるのではないかと考えられます」

今も実験室で内耳の研究を行う。「人間の第6感ともいえる、“気圧感覚”のメカニズムを、いつか証明したいんです」

内耳のむくみをとるマッサージ

 内耳のむくみをとるマッサージも効果的だ。両耳たぶを上下横の3方向に5秒ずつひっぱったり、耳たぶを軽くひっぱりながらぐるぐる5回まわす。また、紙コップに蒸しタオルを入れて耳たぶを隠すように当てて温めるのも効果が期待できるという。

 こうした治療法、対処法により、佐藤医師を受診する患者の8割は、よく効いた、まあまあ効くなどの感想を寄せているという。ただ、天気痛を診る医師は佐藤さん以外にほとんど見当たらず、同医師の外来は、来年の春先まで予約でいっぱいなのだという。

「仲間を育てるしかないですね。まだ始まったばかりですが、天気痛の治療に関する研究会を立ち上げました。こういう会をとおして医療者のネットワークが広がっていけばいいと思います」

「仲間を育てるしかないですね」

「天気痛は“よくある病気”と理解する人が増えてほしい」

 あとは、天気痛の辛さを、しっかり理解してくれる人が増えることが必要だろう。

「気圧で体調が変わりやすくて……」

「ああ、天気痛って言うんだっけ、この前ネット記事で読んだよ」

 というような会話が、普通にされるようになれば理想的だと佐藤さんは語る。

「怠けていると誤解されると孤立しやすい。そうではなく、天気痛はよくある話なのだということを理解する人が1人でも増えてほしいですね。そういう環境にならないと、職場の上司にも言いづらく、結果的に無理に仕事をして症状を重くしてしまいかねない。もっと理解が広がれば、患者さんも通院しやすいし、治りやすいと思うのです」

 天気痛は梅雨時だけでなく、梅雨があけるときも要注意だという。くれぐれも対策を。

写真=鈴木七絵/文藝春秋