低気圧が近づくと頭痛や関節の痛みがひどくなる。とくに梅雨時のように天気の悪い日が続くと、その頻度が増すので、もしかしたら何か病気が隠れているのか不安になったりする。しかし……、

「実はそうした痛みの中には、気象の変化がもたらしているものがかなり含まれています」

 というのは、愛知医科大学学際的痛みセンター客員教授・佐藤純医師である。佐藤医師は、20数年にわたって、気象と痛み、慢性痛との関係を、動物実験や臨床実験で本格的に研究してきた。

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佐藤純医師

「天気痛」は推定1000万人! うつの原因にも

 天気の変化による痛みや体調不良を抱える人は日本全体で1000万人を下らないのではないか、とも推測する。ざっと10人に1人である。これは立派な病気だということで、5年前「天気痛」と名付けた。

「“気象痛”だと難解な感じがするし、“お天気痛”だと丁寧すぎて男性は嫌がるかもしれない。それで“天気痛”に落ち着いたのです」

 2週間に3日のペースで患者を診ているが、訴えでいちばん多いのは頭痛だという。

「頭痛持ちでないと理解できないかもしれませんが、片頭痛を訴える方の中には、頭痛薬を飲んでも治らず、寝込むほど重い症状を抱える方がいらっしゃいます。そういう方は、気圧変化の激しい季節になると、『また明日も痛むんじゃないか……』と不安になり、眠れなくなったりもするのです。その結果、うつっぽくなったりもします」

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親が誤解しやすい子どもの「頭痛」

 子どもはうまく症状を説明できない面もあり、問題が見過ごされがちだ。頭痛の特性として、その日のうちに痛みが引いてケロッとしたりすることもあるので、怠けているんじゃないかと誤解する親がいるという。

「とくに受験を控えた中学生や高校生を持つ親は、出席日数が足りないと内申点に影響するからと、子どもが頭痛を訴えても、無理やりベッドから引きずりだして学校に行かせてしまうケースもあります。理解してもらえないお子さんは本当に辛いと思いますね」