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「新AE形」時速160kmの真打ち登場

 2010年、スカイライナーに2度目の転機がきた。成田スカイアクセス線の開業だ。1982年に検討された「北総開発鉄道(現・北総鉄道)延伸」案だ。2010年時点で北総鉄道は京成高砂~印旛日本医大間を運行しており、印旛日本医大から京成電鉄本線の空港第2ビル駅付近に接続する線路が建設された。まとめて京成高砂~成田空港間を成田スカイアクセス線と呼ぶ。新規建設区間は在来線最速の時速160キロ運転を可能とした。また、京成高砂~印旛日本医大間は時速130キロを出せるように改良工事が行われた。

時速160キロ運転に対応する現在のAE形は「新AE形」と呼ばれている

 在来線の時速160キロ運転は前例がある。北越急行ほくほく線だ。北陸新幹線金沢延伸開業以前の関東~北陸連絡特急「はくたか」を時速160キロで走らせていた。成田スカイアクセス線の高速運転にあたり、鉄道総合技術研究所の安全面の検証と運行面の助言、北越急行の支援があったという。

 AE100形の最高速度は時速130キロ、営業運転最高速度は時速110キロと設定されていた。成田スカイアクセス線には力不足。そこで、新たに時速160キロ運転に対応する車両が製造された。それが現在の新AE形だ。伝統の定速制御装置はもちろん健在。ただし操作はスイッチボタンを押すだけ、操作方法は進化していた。

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新AE型の運転台

「京成電車は変わったな、と思いました」

 AE形は車両デザインにファッションデザイナーの山本寛斎氏を起用し、彼のコンセプトを実現すべく、東急車輌製造(現・総合車両製作所)と日本車輌製造が頑張った。ロングノーズのスマートな流線型、車体色はストリームホワイトで、藍色をメタリック調としたウィンドブルーの帯を配した。客室も藍色を基調とし、ドーム型の高い天井に間接照明、座席は航空機のシートに似た薄い構造で、着席時に広々とした開放感を演出する。

座席は航空機のシートに似た薄い構造で、着席時に広々とした開放感を演出

 成田スカイアクセス線の開業と新AE形の運行開始により、成田空港と都心は最速36分で結ばれた。ライバルの「成田エクスプレス」に比べて速度も運賃も優位に立った。成田空港付近ではスカイライナーが成田エクスプレスを追い抜く場面も見られる。2019年10月の京成電鉄ダイヤ改正で、スカイライナーの20分間隔運転が実現し、待たずに乗れるスカイライナーとして、ますます便利になった。

宗吾車両基地にて。左から順に京成線にも乗り入れている「都営地下鉄5500形」、成田スカイアクセス線用車両として2019年10月に運用を開始した「京成3100形」、スカイライナー用「新AE形」
3100形の特徴として、ロングシートの一部が跳ね上がり「荷物置き場」となる

「新線区間では夜間に走行試験をしていました。季節が進んで夜明けが早くなると、ああ、こんなところを走っていたんだ、と気付き感慨深かったです。新AE形の第一編成が京成本線で試運転を始めたとき、沿線の駅や線路脇で皆さんが手を振ってくださいました。男性鉄道ファンだけではなく、お子様やママさんも。皆さんカメラを列車に向けて。京成電車は変わったな、と思いました」(田中氏)

たちまち人気者になった新型AE形

 スカイライナーの今後の課題は営業面だ。JRグループには訪日外国人向けのフリーパス「JAPAN RAIL PASS」がある。訪日客はさっそく成田空港駅で使用を開始し「成田エクスプレス」に乗り込む。「スカイライナー」の運賃料金は単体だと「成田エクスプレス」に勝てるけれど、「JAPAN RAIL PASS」には敵わない。現在は一部のLCC路線などで、機内で割引きっぷを買えるサービスを実施するほか、窓口でも東京の地下鉄フリーきっぷとセットにしたきっぷを販売している。

 遠かった成田空港をもっと近くへ。

 日本の元祖空港特急「スカイライナー」と京成電鉄の挑戦は続く。

成田空港駅構内。スカイライナーが発着するスカイアクセス線(オレンジ)と従来からある京成本線(青)は、色でエリアが区別されている
スカイライナーの売りは「最速36分」と「20分毎運転」

写真=杉山秀樹/文藝春秋