離島政策の重大な意味
そして、この海上および空中での防衛において決定的に重要になってくるのが、尖閣諸島をはじめとする離島の存在です。ところが六八五二もある日本の島嶼のうち実に無人離島は六四二九にものぼります。また有人島の人口も激減の一途をたどっている。
硫黄鳥島、横当島、上ノ根島、臥蛇島、草垣群島、宇治群島、男女群島など孤立し放置された日本の無人島を狙っているのが中国です。これは国防・領土保全の観点からして極めて由々しき事態です。
国防という観点から見たとき、離島の重要度は格段に上がります。たとえば地上レーダー、水中固定ソナー、無線傍受システム、監視哨などを設置したり、これらの情報を伝達する際の通信設備を置くことで、日本の領海、領空を囲む一大情報ネットワークが出来上がります。また、本土から遠く離れた離島を、各種地対艦ミサイルや防空ミサイルのプラットフォームとして活用すれば、事実上、ミサイルの射程が大幅に延びることにもなるのです。
ところが、たとえば与那国島には海上自衛隊の艦船が入港可能な港湾施設もありません。島の空港にP-3Cをフル装備で離着陸させると、滑走路が凹んでしまうという呆れた現状があるのです。
離島に自衛隊を配備することは、災害への備えにもつながります。また防衛関係の空港、港湾施設などのインフラ整備に際しては、島民の利益にもつながるよう配慮しなくてはなりません。そのためには、国家レベルでの適切な支援努力が不可欠です。八月に日本政府は名前がなかった一五八の「国境離島」の名称を決めましたが、これも有効な措置だと考えます。
最後に、中国と対峙するには、やはりアメリカをいかに巻き込むかという戦術も重要です。まず王道としては、日米共同作戦計画の策定が急務でしょう。米軍ではすでに朝鮮半島有事に関しては作戦計画を策定したと伝えられていますが、日本も尖閣諸島や台湾など中国との紛争シナリオを複数想定し、米国と共同作戦計画を策定することで、中国に対する抑止力を一層高める必要があります。
またアメリカを巻き込むためには「変化球」も有効です。たとえばCNNなどの米報道機関に働きかけ、魚釣島などに上陸させ、尖閣諸島の実態をレポートさせるのも有効でしょう。
さらにいえば、アメリカには民間の軍事請負会社があります。退役軍人や傭兵を紛争地帯に供給するほか、食糧や武器弾薬の輸送、政府高官や重要施設の警備、地雷・不発弾の処理など多岐にわたって活動していますが、タイミングを見計らって、彼らを尖閣諸島に常駐させるのです。その場合、日本政府や自治体ではなく、一般企業、たとえば地方の建設会社などがクライアントになるという方法もあります。どこの国もそうですが、米国は自国民の生命が脅かされる事態には敏感に反応します。
今、日本は蒙古襲来、日露戦争、先の大戦に次ぐ“第四の国難”といえます。国民の知恵と力をふり絞って、この難局に立ち向かわなければなりません。