なお、現在の防衛法制では、「武力攻撃事態」を、大規模着上陸侵攻、航空攻撃、ゲリラ攻撃、弾道ミサイル攻撃という形で想定しています。一方、この類型に入らない危機を、「緊急対処事態」としています。しかし、昨今、話題にのぼる無人離島への侵入、大規模テロといった事態にうまく対処できる、適切な法整備は未だ不足しているのが現状といわれています。
防衛出動した自衛隊は、二〇一四年七月一日に閣議決定された「自衛の措置としての武力の行使の新三要件」を満たす場合に限り、武力を行使することができます。
もちろん、自衛隊の護衛艦が突然攻撃を受けた場合などは、現場の指揮官が反撃の判断をしなければならない局面もあるでしょう。
また、日本はアメリカとの間に日米安全保障条約を締結しており、この日米安保条約によって、アメリカは日本の施政下にある領域に対して武力攻撃が発生した場合には、日本と共同でこれに対処することが義務付けられています。ただしこれには、アメリカは自国の憲法上の規定および手続きに従うという条件がついています。だからこそ、日頃から日米関係を緊密にする努力を重ね、アメリカにとっての日本の価値を高めておくことが重要なのです。
なお、たとえば中国との間に無人島である尖閣諸島をめぐる武力衝突が起こったケースを考えてみると、大部分の日本国民の日常生活に及ぼす影響は、一見あまり大きくないようにも思われます。実際どうなるのでしょうか。
まず考えられるのが、日本経済に与える影響です。金融市場ではリスク回避のため投資が引き揚げられ、株価暴落が予想されます。海上の船舶輸送も影響を受けざるをえません。中国との貿易も滞ることとなり、燃料や食糧をはじめとする物価の高騰は免れません。これは中国側も同じです。日中の経済的相互依存、さらには国際経済における両国の影響力を鑑みれば、日中の軍事衝突は、私たち一般国民の日常生活にも少なからず影響を及ぼすものであると考えられます。