今年6月20日、稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾の3人が中国進出を検討していることが報じられ、芸能ニュースの話題をさらった。言うまでもなく、SMAPは昨年末に解散、彼ら3人については今年9月8日付けでジャニーズ事務所との契約を終了する意向を示している。

 日本側の芸能報道を総合すれば、3人の中国進出は元マネージャーの飯島女史と、その中国通人脈とされる人々が青写真を描いたという。SMAPは2011年9月16日に北京でコンサートを開いて3万人を動員し、日本人歌手としてはかなり良い発音で「夜空ノムコウ」や「世界に一つだけの花」を披露した実績もある。ゆえに元メンバー3人の再起を賭けた舞台に、中国が選ばれたというわけだ。

 もっとも、私がちょっと考えただけでもこの計画はかなり前途多難に思える。以下、彼らの前途を阻む3つの壁について指摘しておきたい。

ADVERTISEMENT

1.中国において日本のアイドルは「オワコン」

©getty

 SMAPのみならず、そもそも現代の中国において、日本の大部分の歌手や芸能人の人気は基本的に下火だ。若干の例外は一部の熱狂的なファンを抱えるAKB系や若手ジャニーズ系の数グループと、『名探偵コナン』の主題歌を歌い続ける倉木麻衣くらい。他には一部の有名AV女優がいる程度である(もっとも最近はAV女優ブームも下降気味だ)。

 過去の一時期(1990年代から2000年代前半まで)、中国でジャパニーズカルチャーが国民的な人気を博したことは事実である。娯楽の絶対数が少なく、いっぽうで中国政府による国民管理も官民の著作権意識も弱かった当時、『星の金貨』『ロングバケーション』『GTO』といった日本のドラマは、安価な海賊版の記録媒体を通じて全中国的に消費され、人気を集めた。当時、酒井法子・木村拓哉・反町隆史・松嶋菜々子らの顔と名前は、日本に何の興味もない田舎の人たちの間ですらそれなりに知られていた。

 これは歌手も同様だ。特に浜崎あゆみと宇多田ヒカルの2大巨頭の楽曲はほぼ中国の国内歌謡に近く、タクシーの車内や地方の駄菓子屋の店先でもよくかかっていた。中国のローカル系カラオケでも、歌詞をローマ字表記にした彼女らの曲が多数収録され、日本語がわからない中国人が歌うことも多かったと思われる。むろん、SMAPをはじめとしたジャニーズ系や小室ファミリー、90年代後半のヴィジュアル系バンドなどの曲も、往年の中国の若者の間ではそこそこ聴かれていた。

 だが、JポップやJドラマ業界が2000年代なかばから徐々に斜陽に差し掛かり、これと軌を一にして中国(というよりアジア全体)で日本人気が韓流人気に置き換わったことで、これらは過去の話に変わっている。現在の中国において、日本人の歌手や芸能人の知名度はパッとせず、また従来人気があった人たちもどんどん「過去の人」と化している。これはSMAPも例外ではない。

©getty