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花火を快適に楽しむ方法。小説の取材で費やした2年で習得しました

『空に咲く恋』著者・福田和代さんがコツを伝授

2017/07/07
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 日本人は大の花火好き。主な大会だけで約360もある。みなさんも友達や恋人、家族、あるいは一人でどこかの花火大会に出かけたことがあるのではないだろうか

『空に咲く恋』(文藝春秋)で花火師の青春を描いた福田和代さんは、この小説のために2年にわたって(!)全国津々浦々の花火大会の取材を重ねた。試行錯誤の末に福田さんがたどりついた快適に花火を楽しむ方法とは?

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『空に咲く恋』(福田和代 著)

 私はこの小説の取材を始めるまで、花火大会が苦手だったんです。子どもの頃に両親に連れられて見た地元の花火大会以来、一度も行ったことがないくらい。

 ところが、花火師の話を書くことになってから、人が変わったように花火大会に通いまくりました。大曲、長岡、土浦のいわゆる「三大花火」を始め、地方の花火大会まで。数十万人の人混みでもみくちゃにされてぐったりしたり、ゲリラ豪雨に見舞われたりと散々な目にも遭いましたが、そのおかげで、自分なりの花火を快適に見る方法を編み出すことができたのです。

 ポイントは2つ、「移動」と「装備」です。夏休みで旅に出る方もいると思うので、ここでは(地元ではなく)ちょっと遠出をして花火大会を見に行くときバージョンを紹介したいと思います。この2つのコツをつかむことで、花火ライフが飛躍的に快適になりますよ。

広島、宮島水中花火大会。©共同通信社

 ではまず「移動」について。花火大会に行ってぐったりした経験は誰しもあると思いますが、その原因のほとんどは「人疲れ」です。でも、ちょっと移動の仕方を工夫するだけで劇的に人疲れから解放されるんです。

〇徒歩30分以内なら歩こう

 大きな大会になると、最寄駅から会場までシャトルバスが出ている場合があります。が、乗り場には長蛇の列で心が折れることも。そこで私は、徒歩30分(約2km)以内なら歩いちゃいます。結果的に会場に早く着けたりしますし、屋台で冷たいビールやら揚げたての鶏の唐揚げなど、花火のお供を選びながら歩くのも楽しいですよ。

〇早く行く

 わかっていても、実行する人は意外に少ないのがコレ。土浦の花火大会に行ったときのことですが、開始の30分前くらいから会場が急激に混み始めます。ちなみに私は1時間前には会場に着きました。本当はこれでも遅いくらいなのですが、ギリギリのところで眺めのいい席を確保することができました。

〇そして早く帰る

 もっと重要なのは帰りです。本当に残念なことですが、安心して駅にたどりつくには少し早めに花火を切り上げるのが一番です。が、花火を最後まで楽しみたいのが人情というもの。そのときには、最後の花火が終わると同時に動き出す、くらいの気持ちを持っているといいかもしれません。ちょっとした心構えで、駅に戻る時間が全然違います。

 あるいは、思い切って花火大会の余韻を楽しむ。大きな大会だと、懐中電灯やサイリウムで空を照らし、花火師さんへの感謝を表すことがあります。会場が一体感に包まれて、その瞬間が私は大好きですね。そして悠々と会場をあとにし、近くの飲み屋でお酒を飲み、帰宅ラッシュをやり過ごす(笑)。場所にもよりますが、とりあえず駅を目指す人が多いので、近隣の飲み屋さんは意外と入りやすいかも。

浴衣で花火。日本人でよかった! ©iStock.com