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アカデミー賞作品賞は『パラサイト』 予想的中のMs.メラニーが語った“凄みと弱点”

Ms.メラニーインタビュー #2

2020/02/09

 “オスカー予想屋”として注目を集め、アカデミー賞の魅力とその受賞予想メソッドを紹介した『なぜオスカーはおもしろいのか? 受賞予想で100倍楽しむ「アカデミー賞」』(星海社新書)を著したMs.メラニー。2018年第90回アカデミー賞では全24部門中21部門の受賞を的中させた彼女に、2019年第92回アカデミー賞を予想してもらいました(全2回の2回目。前編から続く)。

Ms.メラニーの第92回オスカー最新予想
Ms.メラニー

アカデミー賞の裏側に蠢くドラマ

――今回の『なぜオスカーはおもしろいのか? 受賞予想で100倍楽しむ「アカデミー賞」』を読むと、アカデミー賞って映画並みのドラマが裏側で蠢いていることがわかります。たとえば女優たちへのセクハラで#MeToo運動を招いたプロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが、手掛けた作品を受賞させるためにさまざまな手を使い、それがいまや慣習となってしまったとか。それゆえに作品と向き合うだけでは予想できないですよね。

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Ms.メラニー 私がアカデミー賞に最も夢中になっていた時期が1990年代から2000年代で、その頃は彼が率いていた独立系配給会社ミラマックスの作品の受賞とノミネートが続いていて、圧倒的な強さを誇っていたんです。彼のオスカー獲得に特化したマーケティングが、ものすごく効果を発揮していました。いまは作品賞のノミネート枠は最大10本ですが、あの頃は5本だったんです。だから、「なんでコレが漏れるの?!」という作品が結構あった。そういう時でも、ミラマックスの作品は必ず入っている。それが悪い映画ということではないんですけど、漏れた作品のほうがどう考えても優れていることもしばしばあって。そんなパワー・ゲームみたいなものもアカデミー賞の醍醐味かな、と裏側も含めて楽しむようになりました。

聞き手・平田裕介さん

今年の予想「助演男優賞はブラピで決まり」の理由

――では、2月9日(日本時間では2月10日午前8時30分~)に開催される第92回アカデミー賞授賞式の予想をお伺いしたいのですが。

Ms.メラニー 現時点でコレだとはっきり言い切れるのは、助演男優賞、助演女優賞、撮影賞くらいですかね。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(以下ワンハリ)のブラッド・ピットは、このまま行けば助演男優賞を獲ると断言します。

ブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオ ©ロイター/AFLO

『アド・アストラ』も評判が良く、『ワンハリ』での彼は大絶賛で2019年はブラピの年だったと言われるほど。他の候補も錚々たる顔触れだけど、『A Beautiful Day in the Neighborhood』のトム・ハンクス、『2人のローマ教皇』のアンソニー・ホプキンスは作品が弱い。アル・パチーノとジョー・ペシは同じ『アイリッシュマン』でのノミネートだから票が割れる。そしてブラピ以外は、すでに俳優部門でオスカーを獲っている。となると、決まりですよね。ここで彼にあげるのがベストのタイミングでしょう。