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アカデミー賞作品賞は『パラサイト』 予想的中のMs.メラニーが語った“凄みと弱点”

Ms.メラニーインタビュー #2

2020/02/09
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「『パラサイト』は大快挙だけど作品賞は難しい気がする」

――ここまでくると、どうしても作品賞についてもお聞きしたくなるのですが……。やはり最多11部門ノミネートということで『ジョーカー』が獲るのか、あらゆる面で破竹の勢いを見せている韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(以下、『パラサイト』)が持っていくのか、気になってしかたないです。

Ms.メラニー 『ジョーカー』の最多11部門ノミネートはすごいけど、それよりも『パラサイト』が破格の大快挙。まず韓国映画でこれだけ健闘しているのは、単純に考えてそれだけよく出来ているからなんですよね。去年のオスカーでメキシコの『ROMA/ローマ』が食い込んだことで、そういう傾向に入ってきたのは確かだとは思います。『ワンハリ』もフロントランナー的な扱いになっているけど、すでに『パラサイト』とはカンヌ国際映画祭で勝負していて、そこで一度負けている。『パラサイト』はパルム・ドールを獲ったけど、『ワンハリ』は無冠ですから。

 個人的にも『パラサイト』は面白すぎたし、驚かされたし、唸りました。考えてもみなかった方向に話が進んでいって、しかもジャンルが入り組んでいる。他の監督には絶対に作れないですよ。どう考えても『パラサイト』にあげたいというか、いちばんおもしろい映画だと思うんだけど……。でも、韓国映画が作品賞を獲るかといわれたら難しい気がする。やはり、なにか他のものに行ってしまう気がします。

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ソン・ガンホとポン・ジュノ監督 ©AFLO

――そうなってくると、今年は予想しやすい年とは言えなさそうですね。

Ms.メラニー 私、作品賞に関しては5年連続で外しているから、大きなことは言えないんですよね。作品賞候補が最大10本になったここ10年、作品賞の投票方法が変わり、プレファレンシャルバロットという仕組みが導入されたんです。言葉で説明するのが難しい仕組みなので説明を省きますが、その仕組みだと一番人気のある作品というよりも、一番“嫌われない作品”のほうが作品賞に選ばれる可能性が高いようなことになる。さらに今年は「これだ!」っていうフロントランナーがいないのも予想を難しくしていますね。『パラサイト』は韓国映画で非ハリウッドだし、どの作品にもなにかしらマイナスになりそうな部分がある。そのあたりを考えると、前哨戦のゴールデングローブ賞のドラマ部門で『1917』が持っていったのも納得できるんですよね。でも『1917』にも、主演男優賞も助演男優賞も一切ノミネートなしという足りない部分がある。ほんと、今年は予想が難しいです。

 

――予想しにくいだけに、授賞式当日は相当盛り上がりそうですね。今年の授賞式はどんな態勢で臨まれるんでしょうか。

Ms.メラニー もちろん、例年通りです。授賞式当日はしっかり有給休暇を取って、ローリー(仮名)という予想仲間たちと授賞式の鑑賞会をします。授賞式が始まる1時間くらい前のレッドカーペットから見始めて、乾杯をし、ワイワイと話しながら最後まで見届けます。マイナーな賞の受賞者にかぎって、素晴らしいスピーチがあったりするので、何一つ聞き逃すことがないように、テレビにかじりついています。予想が当たったり外れたりすることに一喜一憂しながらのあっという間の4時間です。今年も今から楽しみですね。

【前編】「アカデミー賞」で人生が変わった……オスカー予想マニアで会社員の私がMs.メラニーになるまで から続く

聞き手・構成=平田裕介
写真=末永裕樹/文藝春秋

アカデミー賞作品賞は『パラサイト』 予想的中のMs.メラニーが語った“凄みと弱点”

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