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経済学による真面目でポジティブな予言

『人口と日本経済』 (吉川洋 著)

2016/12/07
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 日本の人口が減少し始めた。一方、長寿の傾向は高まり、このままでは社会の構成員における働き手の割合が減って行く。人口減少とは、すなわち国の衰退を招く事態なのではないか? そんな疑問に答える本が、堅調な売れ行きを見せている。日本のマクロ経済学を代表する重鎮である著者が、アカデミックな知見に基づいて導き出した答えは、明快な「NO」。その語り口は穏やかで、学者的な生硬さはなく、読みやすい。

「以前の著作である『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』(ダイヤモンド社)を読んで、学問的にしっかりとした内容と、素人でもわかるような読みやすさを両立させられる方だという印象を受けたんです。それで執筆を依頼しました。『人口』と『寿命』を大きなテーマにしたエッセイというのは、著者からのご提案ですね」(担当編集者の田中正敏さん)

 企画スタートからおよそ4年がかりでの執筆。「エッセイ」とはいうものの、その内容はじっくりと練り上げられたもの。著者の中で長年にわたり熟成され、血肉となった思考のエッセンスが詰め込まれている。

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「経済学の本は沢山出ていますが、明るいものと暗いものが両極端だと思うんです。そして真面目な内容だと悲観的になりがちです。この本は真面目な内容でありつつポジティブなところがある。そこが多くの読者に受け入れられた一因かもしれません」(田中さん)

2016年8月発売。初版1万5000部。現在7刷6万6000部

経済学による真面目でポジティブな予言

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