人が判断をくだすとき、先入観や偏りから陥りがちな「心理バイアス」がある。経営学、認知心理学、行動経済学から導き出された101の心理バイアスの中から、交渉時やセールスに使える「フレーミングの罠」を紹介する。
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「1日につき、(たったの)80円ちょっとです」
フレームとは枠のことであり、フレーミングは、人の思考に何かしらの枠を設けさせることを意味します。
たとえば3万円のサービスを売ろうとする際、そのまま「3万円です」と見せるのと、「1日につき、(たったの)80円ちょっとです」と見せるのでは、後者の方がお得感を感じる人は多いでしょう。15万円くらいの多少高価な電子機器も、「毎日のスタバのコーヒーを我慢すれば買える額です」と言われれば、食指が伸びる方も多いはず。
このように人間は、本質的には同じことであっても、フレーミングのされ方で感じ方は変わってくるのです。当然、交渉術やセールスにおいては、相手が自分の条件を飲みやすいようにフレーミングすることがコツとなります。
他に著名なフレーミングに、順序を変えたり、率と実数を変えたりというものがあります。たとえばあるワクチンについて、以下の2つの表現があったとします。
「ワクチンとしての効果はほぼ100%保証されます。ただ、ごく稀に、10万人に1人程度の割合で、入院せざるを得ない副作用をもたらすことがあります」
「これまでに、全世界で1000人、入院騒ぎになる副作用がありました。しかしワクチンとしての効果はほぼ100%です」
このケースであれば、前者を好む人の方が多そうです。
「10万人に1人」はかなり稀な他人事と感じられるのに対して、「1000人」という数字はそれなりに多いと感じられるからです。