昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「上司に君のことを推薦しておいたから」小さな“貸し”を作っておくと何倍も得をする

合理的意思決定のための心理バイアスを知る――#3 「貸し」を作るのは効果的

2020/02/16

 人が判断をくだすとき、先入観や偏りから陥りがちな「心理バイアス」がある。経営学、認知心理学、行動経済学から導き出された101の心理バイアスの中から、日常でもビジネスの場で使えそうな「返報性という心理」を紹介する。

◆◆◆

人間は他人に借しを作るのが嫌い?

 人間には、他人に借りのある状態を好ましく思わず、それを解消したいという心理が強く働きます。ロバート・B・チャルディーニの有名な著書『影響力の武器』でも、この心理は最も強く、抗しがたい心理メカニズムであるとされています。そして実際にこの心理を用いたテクニックがセールスや交渉術、組織行動学の書籍などでよく紹介されています。

 たとえば、将来的に誰かからのリターンを期待するなら、日々少しずつでもいいので何かしらの「貸し」を作っておくと効果的です。ここでは、貸し借りの「精算」は、必ずしもその大きさが釣り合っている必要がないというが1つのポイントです。場合によっては、ちょっとした相手に対するサポートが、その数倍になって返ってくることもあるのです。

©iStock.com

 返報性のより厄介な特性は、実際には借りがなくても、「借りがある」と感じてさえいれば、お返しをしなくてはいけない心理が働くことです。

 たとえば、Aさんがその働きを認められ昇進したとします。そのとき、先輩のBさんが「僕も上司にAさんのことを推薦しておいたから」などと言えば、たとえそれが嘘であっても、Aさんはそれを恩義に感じ「いつかこの借りは返さないといけない」と感じてしまうのです。架空の障害をでっちあげ、「私の方で話をつけておいたから」などと言うのも同様です。