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MERSのトラウマも

 新型コロナウイルスで韓国が大混乱するもうひとつの理由は、2015年の中東呼吸器症候群(MERS:マーズ)の大規模感染のトラウマだ。

 2012年にサウジアラビアで発見されたMERSの致死率は約35%。実はこのMERS、震源地の中東を除くと、最大級の大規模感染は2015年の韓国で起こっている。2ヶ月足らずで186人のMERS患者が確認され、最終的に38人が命を落としたのだ。

ソウル市内の薬局。マスクは品薄状態が続いている(筆者撮影)

 大規模感染の大きな原因のひとつは政府機関の初動の遅れとされ、当時の朴槿恵大統領の支持率は40%から29%まで急落。韓国社会を大きく揺さぶる大事件になった。

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 韓国ではいま、新型コロナウイルス感染者が23人に増えた(6日現在)。今後、新型コロナウイルスの感染者が増え、韓国人の死亡者が発生した場合、初期対応に消極的だった文政権は逆風を受ける。

マスクを買い占める中国人とみられる観光客(筆者撮影)

 すでに影響は現れている。最近の世論調査で、与党・共に民主党の支持率が40%から34%まで落ちたのだ。

 4月に迫った国会議員総選挙を目前に、失地回復をはかりたい与党だが、新型コロナウイルスの影響で候補者らの選挙事務所開所まで延期。それどころか、候補者は選挙運動をする際に、握手の代わりに有権者にアピールする方法に苦心しているという。