2020年1月28日(火曜)夜、文春新書『それでも、逃げない』の刊行を記念して、共著者である国際政治学者の三浦瑠麗さんと作家の乙武洋匡さんのスペシャルトークイベント「失敗、孤独、炎上、そして人生の意味について」が開かれた。
本書は対談形式でまとめられ、2人がそれぞれに聞き手となるような形で、互いの人生を深く掘り下げながら時事的問題にも触れていく構成。このトークイベントでも、書籍さながらの白熱した対話が展開された。
はじめての共著を出すことになった2人の出会いは、4年ほど前にさかのぼる。
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乙武 三浦さんとの出会いは、社会学者の古市憲寿さんがきっかけでした。古市さんが三浦さんと親しくしているのを知っていたので、引き合わせていただいたんです。でも、最初から三浦さん、パンチ効いてましたよね。お会いする前に、古市さんからこんなメッセージをもらったんです。「三浦さんから伝言があります。『私、人妻ですからね』って」(苦笑)。いやもう、ド緊張で現場に行きました。どうやら第一印象はよくなかったみたいですね。「何この人、猫かぶってるんだろう」とね。
三浦 いやいや(笑)、私ひどいですね。はじめのうちは、乙武さんのお話が本質的なところではなくて、ものごとの外縁をグルグルしている印象でした。でも、いろいろお話ししているうちに、それは「僕という人間をどう見ているのですか」ということだったのか、と合点がいきました。お会いして以降、乙武さんの文章やメディアでの振る舞いをさまざま拝見するようになると、パーソナルな印象と表に出ているときの印象が違う、と感じるようになりました。だからこの本の中では、そのギャップはいったい何なのか、と、不必要なくらい、乙武さんのギリギリのところまで迫っています。
最初の質問は「乙武さんは、女性のどこを愛するの?」
乙武 確かにギリギリでしたね。この本のためのトークセッションは、一回3時間近く、7度ほど行ったのですが、三浦さんの私に対する最初の質問は「乙武さんは、女性のどこを愛するの?」というものでした。やっぱりパンチが効いてました(笑)。
でも私も三浦さんと接していて、実際にお会いしたときと、メディアで受ける印象のギャップが気になっていたんです。
私は社会や政治のことを、一国民、一有権者としてもっと知りたいと思って、いろいろな論者の方の意見を聞いていくと、今って右なら右、左なら左に振り切った方が、ハッキリ言って商売になることがわかってくるんです。威勢のいいことを言っていれば、お仲間が盛り上げてくれて、本も買ってくれたりするし、ぶっちゃけテレビだって出やすくなる。だからあえてどっちかに振り切る方が多いんです。でもそれって、本人は潤うかもしれないけど、本質的な議論からは離れていってしまうのではないかと思っていました。
そう思った時に、三浦さんの分析やご意見は、ご本人がバランスをとろうとしているかどうかはわからないけれど、とてもバランスがよくて、さまざまな視点に目配りがされた総合的な意見だな、と思えたんです。おべんちゃらではまったくなく、ね。ただ、もしも三浦さんと同じ内容の発言を、たとえば60代の男性が言っていたら、みんなすんなり受け入れるのに、三浦さんという30代の女性が話していることで、見る側にバイアスがかかってしまい、キツい印象を持たれたり、素直に受け取ってもらえなかったりするように感じていました。今回の本は、そういった三浦さんに対する誤解を解くというか、そのお手伝いができたら、と思ってご提案をしたんです。