文春オンライン
「どこに行っても入口で体温測定」「ハンドソープも完売」新型肺炎で“異常事態” 北京で何が起きているのか【現地レポート】

「どこに行っても入口で体温測定」「ハンドソープも完売」新型肺炎で“異常事態” 北京で何が起きているのか【現地レポート】

2020/02/07

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 国際, 医療

note

長澤まさみの出演映画が公開延期

 3日、中国ではおなじみとなっているシェア自転車に乗って、北京市内を回った。

 まず一目で分かったのは人の少なさだ。最初に、政府機関や各国の大使館などが周囲に集まる中心部の地下鉄駅「建国門」に向かったが、朝の出勤時間帯にも関わらず利用客はまばらだった。印象では平常時の10分の1程度だ。駅から出てくる人は、ほぼ全員がマスクを着用していた。

 人が少ないのには訳がある。そもそも春節の大型連休は当初1月30日までだったが、中国政府はこれを2月2日まで延長する異例の措置をとった。さらに北京市は、医療やインフラ産業などを除く市内の企業に対し、9日まで出勤を控えるよう求める通知を出しているのだ。職場に人が集まって感染が拡大することを回避するため、電話やインターネットを活用した在宅勤務などを行うよう要請している。

ADVERTISEMENT

春節休暇明けの4日、買い物客の姿がまばらな北京の繁華街・王府井(筆者撮影)

 中国メディアによると、上海市や広東省など多くの地域で同様の措置がとられている。春節休暇が明けても、企業活動が大幅な制限を受ける異常事態が続いている形だ。

 次に向かったのは、国内外の銀行オフィスなどが並ぶ金融街だ。天安門広場からは数キロの場所にある。3日には株式など金融市場が再開されていたものの、ここも普段と比べて人の姿が極端に少ない。目立つのは、中国語で「外売(ワイマイ)」と呼ばれるスマートフォンを利用した料理のデリバリーサービスの宅配員の姿ばかりだった。どうやら付近の飲食店の多くが休業を続けているため、いつも以上に「ワイマイ」を使っている人が多いということのようだった。

 そして、最後に向かったのは北京を代表する繁華街「王府井(ワンフーチン)」。普段は買い物客らでにぎわっているが、平日の昼間ということを差し引いても人が少ない。

ガラガラの北京市内のショッピングモール ©AFLO

 ショッピングモールの中に入ると多くの飲食店や服飾店がシャッターを下ろしたままで、店先には「疾病の予防・管理への協力のため臨時休業します」といった張り紙があった。また、ランチタイムにもかかわらずフードコートも来店客はまばらだ。

 ショッピングモールの入口では体温検査が行われている。ちなみに今や体温検査は、地下鉄駅、オフィスビルやスーパーマーケットの入口など多くの場所で見られる「日常風景」。中には、医療用防護服のような重装備を着けた検温担当者もいて、ぎょっとさせられることも少なくない。これではショッピング気分も失せるというものだろうし、そもそも感染を防ぐため繁華街に出てくる人は少ないのが現状だ。

北京の繁華街・王府井のショッピングモールの入口で行われている体温測定の様子(筆者撮影)

 新型肺炎は春節商戦を直撃したこともあり、とりわけ消費産業への影響が大きいとみられている。映画、飲食・小売り、旅行業だけでも春節期間中の経済損失が1兆元(約15兆6000億円)を上回るという、中国の民間シンクタンクの試算もある。

 映画産業では、春節に合わせて公開予定だった7作品の上映が延期された。妻夫木聡さんや長澤まさみさんら日本人俳優も多数出演するという中国産探偵映画「唐人街探案3」も含まれている。