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「ヒトラーの予言」を大真面目に取り上げる

 ここまでは公務の裏で行われていた営業活動について触れたが、それ以外にも頭を抱える内容があった。中でも衝撃だったのが、「ノストラダムスの大予言」で知られる五島勉が発端の「ヒトラーの予言」を、『こんごう』艦長時代の2013年10月に大真面目にブログに取り上げていたことである。

1等海佐のブログより

 1999年7月に人類が滅亡するとしたノストラダムスの大予言は、前世紀末の多感な小中学生を不安にさせたものだが、1999年7月が過ぎるとあっという間に忘れ去られた。その五島勉の予言本の中の話を2013年に大真面目に取り上げたのが、まさか北朝鮮のミサイル警戒にあたっているイージス艦の艦長だとは考えたくない。

 自衛隊高官の歴史認識などが問題になった例は過去にもあったが、「ミサイル撃たれたら破壊しろ」と命じられた現場責任者が、出所の怪しいヒトラーの予言を信じていたのは、個人的にはより破壊力があった。

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 近年、国家主導のフェイクニュースによる世論工作が問題になっている中、教官も務めた幹部自衛官がこの有様では、自衛隊は大丈夫なのか真剣に危惧している。情報保全への意識の低さも目を覆うばかりで、幹部教育の再考の必要があるのではないか。

あくまで氷山の一角に過ぎない

 ここまで見てきたものだけでもアウトなのだが、営業の実態や客に漏洩した情報の全貌はまだ明らかになっておらず、あくまで氷山の一角に過ぎないだろう。2019年に護衛艦『あさぎり』艦長が、フェイスブックに海賊対処活動中の寄港情報を書き込んだとして更迭されており、艦長経験者の不祥事が相次いだ形になる。今回の1佐の件も今後の調査を待ちたいが、その全貌が明らかになった際、より頭を抱えることになるのは確実だろう。

1佐が最後に艦長を務めた補給艦「ましゅう」 (筆者撮影)

「週刊文春」の記事でも言及されているが、1佐は補給艦『ましゅう』艦長時代、部下の不祥事が相次いでいる。その中の1つ、2017年に処分が公表された海曹長が部下の女性自衛官を殴った事件では、「服務指導を徹底させ、再発防止に努める」との艦長コメントが報じられている。

 服務指導が必要だったのは誰だろうか。