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10人に6人が「30年後には移民している」

 中国に逆らってもムダ、声を上げてもムダ――。そんな香港のやるせない雰囲気を如実に示すのが、7月1日付けの現地紙『アップル・デイリー』が掲載した世論調査である。30年後の2047年(中英共同宣言が取り決めた「香港の高度の自治」を認める返還50年目の期限に該当する)に香港がどうなっているかを尋ねた調査の回答は、例えば以下のようになった。

<香港に真の普通選挙は実現していると思うか?>
・実現している 8.4%
・実現していない 70%
・わからない 7.2%
・たとえ普通選挙で当選した人物が出ても北京が任命を認めない 14.5%

<香港の人口構成は香港人(返還前の香港出生者やその子孫)と新移民(返還後に香港に移民した中国大陸出身者)のどちらが多くなっているか?>
・香港人がより多い 9.6%
・新移民がより多い 64.6%
・香港人と新移民が半々である 19.4%
・わからない 6.4%

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<あなたは2047年にまだ香港にいるつもりか?>
・香港にいる 17.6%
・海外に移民 59.5%
・中国大陸に戻る 5.2%
・わからない 17.6%

 ピンとこない人は「日本の民主主義体制は30年後も続いているか?」「人口構成は30年後も日本人が多くを占めているか?」「30年後もまだ日本にいるつもりか?」という質問に置き換えてみてほしい。衝撃的な結果と言っていいだろう。

7月2日、デモの様子を肯定的に伝える反中派の『アップル・デイリー』紙(左)と、「挑戦は許さない」と中国国旗を背景にした習近平の姿を大写しにする親中派の『東方日報』紙。香港ではアップル紙以外のほぼすべての新聞が親中派に変わった。

 現在の香港人の多くは、かつて中国大陸の内戦や共産主義化を嫌って香港に逃げ込んだ亡命者の子孫であり、自分たちの社会を「損切り」するハードルが低いことも、こうした回答につながっていると見られる。ともかく、強い失望を反映した回答なのは間違いない。