昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/02/12

genre : ニュース, 社会

事前チェックで功を奏したケース

 依頼者は夫に不倫関係の女性がいることを確信していた。ただし、それは妻の第六感であり、確たる証拠も気配も露ほども掴めずにいたのである。そこで最後の頼みの綱と思って弊社に調査依頼を寄せてきたのだが、最初のヒアリングで「夫は絶対浮気しています。それは確信しているのですが、いつどこで、どんな女ということまではまったく見当もつきません」と語っていた。

 しかし、悲壮感はなく、夫の不倫を是が非でも突き止めたいという強い意志が感じられ、なんとなくそれを楽しもうとしている節も垣間見られた。探偵との打ち合わせでも、依頼者はとても協力的で、まずは事前チェックをしてみようとの提案も二つ返事で引き受けてくれたのである。

 数日後、依頼者から連絡があった。夫の行動を正確に記録したところ、平日は定時に帰宅し、週末だけ趣味のランニングに1時間ほど出掛けていくだけ。たまに休みの日は、友人に会って来ると言って出掛けるのだが、2時間ほどで帰宅。

「駅前の喫茶店で話してきたよ」

 と、不倫をする時間はなさそうな状況であった。

©iStock.com

 スマホのメールもロックがかけられて確認できず。また怪しい人からの電話やこそこそ話している姿も目撃していないという。しかし妻は浮気を信じて疑わない。

「だって事前チェックに書いてあったように、夜の営みをこちらから求めても拒否をするようになりましたし、外から帰ってくるとすぐにシャワーを浴びるんです。キーホルダーにも私の知らないカギがありました。やっぱり怪しいんです」

 そこまで言うのならばと、早速、探偵が自宅マンションに張り込み、夫の不倫を突き止めることになった。幸い妻が親戚の法事で、週末に1泊2日、家を留守にするという。子どもはすでに独立していたので、その間、家には不倫が疑われる夫ひとりとなる。

 本当に不倫をしているのならば、絶対に動き出すはずだ。探偵たちは、依頼者のマンション前に陣取り、夫が不倫相手のもとへいそいそと出掛ける様子を待ち構えていた。

 ところが、自宅から夫が出てきたのは、土曜日の夕方、スーパーへの買い物と、日曜日の午後、コンビニに出掛けただけで、後は自宅にこもりっきりだったのだ。まさに完全無欠の夫の休日を、探偵たちは見学していただけで終わってしまった。

©iStock.com

「これは奥さんの勘違いかも……」と、探偵たちはそんな認識で一致していた。

 しかし、どうしても気になるのが、妻が言っていた事前チェックにぴったりはまる項目だ。SEXの拒否、帰宅してすぐにシャワー、キーホルダーの見知らぬカギ。もう少し妻の第六感を尊重し、事前チェックで考えられる仮説を推理してみることになった。何時間ものディスカッションの末、行き着いた答えは実に意外なものだった。

 妻が言うように、夫は限りなくクロに近いグレー。しかし帰宅時間は一定。出掛ける場合も短時間で帰って来る。これらの点と点をつなげれば、考えられる答えは……。