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イチロー「伝説の一打」を陰で支えた男が明かす「日本で活躍できた外国人選手の共通点」

『ザ・スコアラー』(角川新書)

2020/02/13
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「ボール球を投げろ」を受け入れられるか

 日米の投手で大きく異なるのが、配球に対する意識の差です。元スコアラーとしては、来日後に日本流の細やかな配球に馴染める性格かどうかはぜひとも事前に確認したいことのひとつでした。そこで考えたのが、日頃バッテリーを組んでいる捕手と話をして性格を聞き出すという方法です。「彼はどんな投手か聞かせてくれないか?」と捕手に声をかけると、本人に聞くよりも客観的な情報が手に入るのです。

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 捕手にたずねる質問はいくつかに決まっていて、なかでも「この投手はボール球を投げることができるか?」という質問は重要項目でした。アマチュア時代から球数管理が徹底されているアメリカでは、投手は限られた球数でできるだけ多くのアウトを奪い、自分が投げ切るイニングを伸ばしたいと考えています。すると、日本流の駆け引きであえてボール球を投げることや、ボールが先行しているときに際どい球で勝負するといったことに抵抗を覚える投手が少なくないのです。

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 確かに、アメリカのやり方は球数の管理のうえで成り立っているのかもしれない。でも、日本球界では、ボール球を投げるべきときにしっかりとボール球を投げられることが、勝てる投手と勝てない投手をわけるものだと考えています。打者が打ちにいくと決めてストライクを待っているときに、捕手がボール球を要求したとします。そこで意図的に、またはコントロールミスでストライクを投げてしまう投手というのは勝てません。打者のバットを何本もへし折るような力強いボールを投げる選手なら話はまた別ですが、そうでない場合は、一軍に定着して投げ続けることもむずかしいと思います。