驚くべきことに、その際の調査では、あるチケットの先行販売の際、発売開始から30分の間、購入のためのアクセスの9割以上が、買い占め目的のソフトウエアによるものだったという。これは極端な例である可能性はあるが、いかに「機械的な買い占め行為」が高速で破壊的であるかを示すもの、と言える。
こうした行為は、単に「買いたい人が買えない」だけに留まらない。販売サービスに対し、本来よりもはるかに多いアクセス集中を招く結果となり、サービス停止の原因となり得る。
「必要悪」では済まない規模に
大手Eコマースサイトやチケット販売サービスは、発売開始時のアクセス集中に対応するため、様々なコストをかけている。それは結果的に、販売手数料として消費者の負担に跳ね返ってくる。
「転売があっても、メーカーやチケットの売主、販売店は売れるのだから喜んでいるのでは」
そんな声を聞くこともあるが、筆者が知る限り、本当に転売を喜んでいる企業は聞いたことがない。無駄な負担や欠品に伴う販売計画の不安定さにつながるため、人気商品を扱う企業ほど、本音として「勘弁してほしい」と思っているのだ。
転売やダフ行為で利益を得る人々がいる一方で、その規模拡大は、流通やサービス運営側に大きな影響を与える。小規模ならば「必要悪」で済んでいたかもしれないが、大規模の経済の中では、その影響が、転売を行っている人々の想定を超えて大きなものとなっているのだ。
「買えない」という状況は、ただでさえ摩擦を生み出す。転売によってその摩擦を大きくすることは、誰のためにもならない。