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 ポン・ジュノ監督が映画監督を夢見たのは12歳の時、中学生の頃だったという。『スクリーン』などの映画雑誌を読みふけり、「小心者で、愚かな映画狂」(ソウル新聞、2月11日)で、「テレビで放映された映画を病的なほど執着して見た」(MBC「監督 ポン・ジュノ」)と語っている。

知人は「天才という人もいますが、努力の人」と評す

 名門の延世大学在学中に映画サークルを作り、「カメラが欲しくて半年くらい学校の売店でドーナッツを売った」(MBC「監督ポン・ジュノ」)と明かしている。大学卒業後は映画専門学校「韓国映画アカデミー」に入学。卒業作品の『支離滅裂』は検事や教授など社会の主流といわれる人々の裏面に隠された“陰”をユーモラスに描き、1994年、バンクーバーや香港での映画祭の招待作品となった。

 長編映画のデビュー作として知られる2000年の『ほえる犬は噛まない』(原題『フランダースの犬』)から『パラサイト 半地下の家族』まで、どこかコミカルだけれども、社会のブラックな部分を恐ろしいほどにあぶり出す作品制作から天才という異名もとるが、『パラサイト 半地下の家族』で撮影監督を務めた人物は「これほど勤勉な人はみたことがない。天才という人もいますが、努力派だと思います」(KBS)と評している。

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 そして、あらためて関心を集めているのが「ポンテール(ポン・ジュノとディテールを合わせた造語)」だ。これは映画制作の過程でポン・ジュノ監督が見せる繊細さをいうが、驚くほど実際の映像と重なる絵コンテは米国でも話題になっている。

名を知らしめたのは、現実の事件を下敷きにした『殺人の追憶』

 ポン・ジュノ監督の名を広く知らしめたのは、2003年の映画『殺人の追憶』だ。80年代から90年代にかけて、ソウル郊外にある京畿道華城市で起きた連続殺人事件をモチーフにした作品で、実際の事件では10人の女性が強姦され殺害された。未解決事件とされていたが、昨年、現場で見つかったDNAとすでに別件で収監中の人物のDNAが最新のDNA鑑定で一致し、韓国では再び注目を浴びた。ちなみに同作の主人公の刑事役はソン・ガンホ氏が演じている。

『殺人の追憶』DVDより

 実は、この作品も含めた3作品により、李明博元大統領と朴槿恵前大統領時代、ポン・ジュノ監督が文化・芸術分野でブラックリストの対象者となっていたこともあらためて俎上に上っている。