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「改ざんできない」SDカードでないとダメなのに……

 デジタルカメラを捜査で使う際のSDカードについては、「NOON」事件の2年前、2010年3月に警察庁が通達を出している。その内容は「デジタルカメラに挿入して使用する画像ファイル媒体(SDカード)は、構造上、記録した画像の編集、加工及び消去が不可能なものを用いるものとする」というものだ。つまり、捜査の際には「改ざん防止機能付き」のSDカード使用を義務付けたのだ。

 ところが、曽根崎署員は通達に違反して、内偵時には画像の消去が可能な一般のSDカードを使っていたことになる。なぜ、そんなことが起きたのか。証人として法廷に立った曽根崎署員は「捜査当時は(消去不可能なカードと消去可能なカードの)どちらの使用も認められていた」といった内容の証言をしている。

 デジカメの画像データに加え、ビデオで撮影した動画データも消去したことについては、「NOON事件に関してはデータを保存すべし、という指示が上司からなかった。紛失防止の観点からデータを消すことにしていたので」と証言した。

SDカードなどに関する警察庁の通達 ©本間誠也

 西川弁護士は言う。

「風営法の無許可営業の事件では、それまで無罪を主張してガチンコで争うことはあまりありませんでした。だから、曽根崎署も動画や画像データの取り扱いについて『まさか裁判で要求されることは(ないだろう)』と甘く考えていたのかもしれません。争いになるとは思っていなかったのではないか」

「自分たちに不利な証拠だから隠ぺいしようということなら大問題ですが、検察はそうした説明をしていません。(データ消去は)あくまで過失なんだ、と。ただ、人一人を罪に問うには、あまりにも管理がずさんです。人の人生を左右する重要な証拠を簡単に消してしまうというのは、信じ難いことではあります」

滋賀県警、新潟県警……証拠画像入りSDカード、次々に紛失

 捜査用SDカードの管理をめぐっては、データ消去とは別の問題も噴き出している。

 2017年7月、滋賀県警の警察署の男性警部が事件関係の写真約250枚が入ったカードを紛失した。規定では、SDカードを使う際は記録を残さなければならないのに、記録を付けずに使用しており、管理が徹底されていなかった。

 2019年5月には新潟県警三条署が、交通事故現場や事故車両などの画像データ約800枚が入ったSDカードを紛失している。滋賀県警のケースも新潟県警のケースも紛失の事実をそもそも公表していなかった。

 また新潟県警上越署は2019年3月、SDカードが挿入されたデジタルカメラ1台を紛失したことを明らかにした。カードには画像データが残っている可能性があるという。

 こうしたSDカードをめぐる“通達無視”ともいえる運用やずさんな管理について、警察庁に質問してみたところ、次のような回答が書面で寄せられた。

「書ききり型記録媒体(改ざん防止機能付きSDカード)の管理については、記録媒体に一連番号を付し、施錠機能がある保管庫等に保管することとされ、また、取扱い状況を書ききり型記録媒体管理簿によって管理することとされるなど、各都道府県警察において、警察庁の通達に基づく適切かつ組織的な管理に努めているものと承知している」

 警察の事件捜査に欠かせない「記録媒体」。それをめぐる問題を取材していくと、さらに不可解な事実が浮かび上がってきた。

#2#3に続く)

取材:本間誠也ほか/取材記者グループ「フロントラインプレス

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