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職質の違法性を隠すため「故意に」消した?

 被告側への検察側の説明によると、映像を確認した検察側が、起訴後の18年6月14日に平野署員にSDカード4枚を返却したが、受け取った署員は覚せい剤事件にかかわっていない警察官だったという。そしてDVDへのデータ移動と保存を実施しないまま、4枚のSDカードは署内で再利用されて上書きされ、証拠となるはずの動画データは消えてしまったとされる。

 被告の弁護人は被告の最終陳述に先立つ最終弁論で、「SDカードの動画データの消去について、検察側はただの過失と主張するが、平野署員らの証言はあまりにも不自然。職務質問の状況の違法性を糊塗するため、故意に消去したものだ」と指摘した。

 続けて「尿の採取に至る一連の捜査手続きには違法性があり、尿の鑑定書は違法に収集した証拠として証拠能力は排除されるべき」と述べ、検察側の懲役4年の求刑に対して無罪を主張した。検察側は動画記録の消去についてはあくまで過失で、「捜査手続きは適正だった」としている。

 判決は2月末に言い渡される予定だ。

クラブ「NOON事件」でも“動画消去”があった

 警察が証拠となるSDカードの映像記録を消去し、その事実が法廷で問題となった――。こうした事例としては、大阪のダンスクラブ「NOON」事件がある。大阪・梅田の老舗クラブ「NOON」で、客に無許可でダンスさせたとして、風営法違反で経営者が2012年4月、大阪府警曽根崎署に逮捕され、起訴された事件だ。

 ダンスまで規制するのか? そうした声を受けてクラブ側を救済するための音楽イベント「SAVE THE NOON」が開かれるなどの話題も呼んだ。

 クラブの営業実態からして、風営法の許可が必要かどうか。裁判の争点はそこにあった。1審、2審とも風営法の許可は不要として無罪判決を言い渡し、最高裁も2016年6月、検察の上告を棄却して無罪が確定した。それまでの規制を緩和する改正風営法が成立したのは、この訴訟がきっかけだった。

 実は、この公判においてSDカードの記録消去が表面化していたのである。1審の公判前整理手続きでのことだった。

 弁護団長を務めた弁護士法人・響の西川研一代表弁護士が振り返る。

クラブ「NOON」事件、弁護団長の西川研一弁護士 ©本間誠也

「弁護団側が証拠開示請求をして事件の捜査報告書を読んでいると、内偵捜査の段階で店内の様子をビデオやデジタルカメラで撮影したという記述がありました。検察側の証拠としてその映像は出ていないけれど、『あるのなら出してほしい』と弁護団として要求したんです。映像を見れば、店内が規制対象となる享楽的な雰囲気でないことが一発で分かると思いましたから」

「ところが、証拠として要求したら、検察は『過去にはあったけども、今はもうない』と言ってきた。『(曽根崎署員が)別の事件捜査のときに上書きして消去してしまった』と。驚きましたね」