「改ざん可能製品 捜査で使用」「県警などの証拠写真記録SDカード」「冤罪の恐れ 指摘も」――。2018年10月、新潟日報の朝刊1面にこうした見出しのスクープ記事が掲載された。デジタルカメラの画像を記録するSDカードについて、全国の多くの警察がデータの消去や改ざんが可能な製品を使っているという驚くべき内容だった。これに関連して、取材記者グループ「フロントラインプレス」が取材を進めると、さらに深い問題が見えてきた。「冤罪の温床になりかねない」(刑事裁判に詳しい弁護士)その実態とは。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
◆◆◆
なぜSDカードが「冤罪の温床」と言われるのか
刑事裁判では、被告に有利になる可能性のあるビデオカメラなどの映像データが、捜査側の手でSDカードから消去される事例などが発覚している。その点は#1で報じた通りだ。これに加え、全国の警察で消去や改ざんの余地があるSDカードが使用されているとしたら、容疑者や被告側にとって不利な事態を招きかねない。
新潟日報が報じた問題のSDカードは、東芝メモリ(現キオクシア)社が2011年に発売した「Write Once(ライトワンス)メモリカード」。警察のほかにも検察や海上保安庁などが使用している。また、民間でも建設業者や事故調査に関わる損害保険業向けなどに市販されている。インターネットの通販でも購入可能だ。
このカードに対応するデジタルカメラは、キヤノンやリコー、ニコンなど4メーカーの計約30機種の一眼レフ、コンパクトカメラである。
キオクシア社のホームページによると、ライトワンスメモリカードは「改ざん防止機能付き」であり、「一度記録した原画像ファイルに対して上書き(編集・加工または消去)が出来ない書ききり型の記録媒体です」と説明されている。
ところが、警察関係者やカメラ業者は「ホームページの内容は正確ではない」と口をそろえる。このカードの画像データをデジタルカメラの内蔵メモリーやパソコンに保存すると、「原画像の編集や消去が可能で、加工ソフトを使えば巧妙に編集することもできる」と異口同音に言うのだ。「改変した画像を別のライトワンスカードにコピーすれば、新たな原本カードが作成できる」と指摘する業界関係者もいる。