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警察庁「SDカードは編集不可のものを用いる」

 フィルムカメラに代わってデジタルカメラが一般的となった2010年3月、警察庁は「デジタルカメラで撮影した写真の活用要領について」という通達を全国の警察本部に出している。その中で、犯罪捜査などでデジタルカメラを使用する際のSDカードについては、冒頭で次のように明文化した。

「デジタルカメラに挿入して使用する画像ファイル媒体(SDカード)は、構造上、記録した画像の編集、加工及び消去が不可能なもの(=書ききり型撮影媒体)を用いるものとする」

 ところが、キオクシア社のライトワンスメモリカードは、フロントラインプレスが検証したように、「構造上、記録した画像の編集、加工及び消去」が可能な製品である。警察庁は自らの通達に違反したSDカードを承認し、全国の警察に使わせてはいないだろうか。

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 全国の警察が徐々に同社製カードを採用し始めた2013年3月、警察庁はSDカードの使用に関する新たな通達を出している。当初の通達と比べて変更は1カ所だけ。文書の最後に「本通達に係るデジタルカメラは(中略)内蔵メモリに情報を保存することをしてはならない」という一文が加わった。

警察庁が出した2度目の通達 ©本間誠也

 デジカメの内蔵メモリに情報を保存すれば消去や改ざんの恐れが生じることから、付け加えられたと考えられるが、冒頭の「(捜査で使用するSDカードは)構造上、記録した画像の編集、加工及び消去が不可能なもの」という部分に変更はない。したがって、2度目の通達は、冒頭の一節と末尾の一文が矛盾しているとも読める内容になった。

SDカードに番号を振れば大丈夫?

 法律の専門家は、警察庁通達をどう見ているのだろうか。日弁連刑事弁護センターの前委員長、奥村回弁護士(金沢弁護士会)は次のように指摘する。

「本来、警察庁のこの通達は物理的な機能として加工などができないカードであることを要求している。ここ(通達の冒頭)はそう読めます。その点で、問題のカードは不十分です。もう1枚、別のカードがあれば改ざんできてしまうのですから。ただ、通達の全体を読むと、警察が使用するカードには番号を付けて管理するので、仮に原本カードと別のカードをすり替えた場合は把握できる。だから、カードそのものに多少の問題はあっても大丈夫、と言いたいのかもしれません」

 しかし、と奥村弁護士は続ける。

奥村回弁護士 ©本間誠也

「購入したカードをすべて番号で管理するとは言っても、当面使わないカードなどは無番号として別枠で設けることもできます。その場合、1番のカードの画像を改ざんして無番号のカードにコピーし、それに1番の番号を付けることだってあり得ます。抜け道はいくらでもあります。問題のカードは市販もされているようですから」