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「警察は原則、“悪意で捜査はしない”と言いますが、仮に悪意でやられた場合でも、被告・弁護側が気づくことができる仕組みが大事です。ところが、現状では見破ることが極めて困難。法廷で検察が証拠として画像を示して、私たちが『この画像はおかしい』と証拠開示請求してSDカードを出されても、それがすり替わった改ざんカードだと立証する作業は、果たして容易にできるのか。悪意による改ざんの可能性は排除できないので、その余地を残さないようにすべきです」

村木厚子さん冤罪事件も「デジタル記録の改ざん」

 足利事件の冤罪被害者・菅家利和氏の主任弁護人を務めた佐藤博史弁護士(東京)は危機感を募らせている。

「捜査で使用するSDカードがこんなことになっているとは知らなかった。驚いています。デジタルカメラを捜査に導入する際、われわれは警察庁から、通達にあるように『簡単に画像を消したり、改ざんや編集は絶対できないSDカードを使う』と説明を受けていた。『心配はいらないんだ』と言われていた。重大な約束違反であるし、大問題だと思います」

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「デジタルの記録の改ざんと言えば、厚生労働省の村木厚子さんの冤罪事件を思い起こします。SDカードを使った巧妙な改ざんというのも、世間に知られていないだけで、実際はこれまで起きていたかもしれない。警察は『改ざんをしたら痕跡が残る』と言うかもしれないが、その痕跡さえもデジタルの知識・技術で変えられてしまうかもしれない。ネガフィルムの時代なら、調書に添付された写真のほかにネガも提出してもらって、偽造か否かを検討できたわけです。警察庁はSDカードについても、ネガフィルムと同様に『改変は不可能だ』と言ってきたのです」

©iStock.com

「結果的に一番のお得意さんが警察になっただけ」

 ライトワンスカードを製造・販売するキオクシア社は取材に対し、こう話した。

「原本のカード内ではなく、別のカードにパソコンを経由して『書き換えることができるか』と問われれば、それはできます。同じカードに同じファイル名で上書きはできませんが、別のカードに同じファイル名で書くことはできます。ただ、それは簡単なことではありません」

「ライトワンスメモリカードは警察向けに作った製品ではありません。世界を目指して作ったものです。結果的に一番のお得意さんが日本の警察になっただけ。私どもは相手先(警察側)のセキュリティーレベルを知らないので、カードの機能だけですべての証拠の担保、保証をいたしますとは言えません」

 警察庁からのファクスでの回答は「ご指摘の製品については、媒体に記録、保管された原画像ファイル自体が編集、加工及び消去されるものではなく、警察庁の基準に適合し、原本性が確保されるものであると承知している」といった内容だった。

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取材:本間誠也ほか/取材記者グループ「フロントラインプレス

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