消去や改ざんができる東芝メモリ(現キオクシア)社製のSD カード「Write Once(ライトワンス)メモリカード」が、警察の捜査で使われている――。この問題に関連し、取材記者グループ「フロントラインプレス」が情報公開請求などによって全国47都道府県警察を調べたところ、42の警察がこのカードを採用していることが判明した。「未採用」は5つの警察に過ぎない。その背景には、警察庁が「(問題のカードは通達の内容に)適合している」との姿勢を崩さない事情がある。このため、このSDカードを採用している警察と採用していない警察では、入札仕様書に明確な違いが生じており、「二重基準」ともいえる状態が生まれている。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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現在、市場に出回っている警察向けなどの「改ざん防止機能付き」のSDカードは、問題となっているキオクシア社製(旧東芝メモリ)=2011年販売開始=のほかに、サンディスク社製=2016年製造中止=、PGS社製=2016年販売開始=の3種類がある。
この中で、キオクシア社のカードだけは、原本のカードに記録した画像データをデジタルカメラの内蔵メモリーやパソコンに保存することによって、部分消去や改ざんが可能であり、改ざん後のデータを別のSDカードに保存すれば、“新たな原本カード”も作成できる。このため、刑事裁判の場で、被告人の弁護士が検察側の証拠写真に疑問を抱いてSDカードを証拠開示請求した際、原本カードではない新たな別のカードを示されても見破るのは困難ではないか、と弁護士らが懸念している。
47都道府県警の90%近くがキオクシア社を採用
フロントラインプレスは都道府県警察でのキオクシア社製のSDカードの使用の実態を調べるため、過去5年分の改ざん防止機能付きSDカードの入札結果と入札の際の製品仕様書などを全国の都道府県警察などに情報開示請求した。
それによると、直近の入札実績では、製品仕様書の例示品としてキオクシア社とPGS社を併記している警察が10前後あるものの、47都道府県警本部のうち、37の警察がキオクシア社のみを採用していた。キオクシア社とPGS社を併用しているのは5つの警察。結果として、キオクシア社は全国の47都道府県警察の89.4%に当たる計42の都道府県警察で使用されていた。図を参照してほしい。