大半の警察では、2013年ころまでは仕様書の例示品としてサンディスク社製を挙げていたが、13年から16年にかけて、次第にサンディスク社とキオクシア社の併記か、キオクシア社のみへと変化している。
なお、キオクシア社の当該SDカードは、ネット上で、40枚以上購入の場合、1枚約800円(税込)で購入できる。警察の場合は大量購入のため、単価はもっと下がると思われる。また47都道府県警の合計で年間のSDカード購入枚数は、百数十万枚程度とみられる。
警察庁は2010年3月、「デジタルカメラで撮影した写真の活用要領について」という通達を都道府県警に出し、捜査時などに使用するSDカードについて規定している。通達ではSDカードに関し、「構造上、記録した画像の編集、加工及び消去が不可能なもの」と明記している。
キオクシア社のSDカードは、原本カードのほかに別のカードがあれば、パソコンやデジカメの内蔵メモリーを経由して改ざんや消去などの編集ができるうえ、“新たな原本カード”を作ることも可能なことから、警察庁の通達に明らかに違反していると指摘されている。ところが、警察庁はそれを認めていないため、キオクシア社のカードを使用している大半の都道府県警察も「警察庁の通達に反してはいない」との見解だ。
大阪府警の「苦しい言い訳」
毎年の入札仕様書に丹念に目を通すと、“通達違反”とも言えるキオクシア社のSDカードを「例示品」として指定するための苦労も垣間見える。
一例として、大阪府警のケースを見てみよう。
サンディスク社製を採用していた2016年まで、大阪府警の仕様書は「一度記録した画像データはデジタルカメラ上では上書き、編集、複写及び削除が不可能であること」「記録した画像データをPC等で編集したものを、再び書ききり型撮影媒体に書き込むことが不可能であること」となっていた。
これらの文章は警察庁の通達にある「構造上、(中略)不可能なもの」の一文を具体的に説明したものと言える。最初の文では、デジタルカメラ上で消去や編集が不可能なカードを要望している。2番目に示した文は、PCを経由しての消去や編集が不可能であることを要求しており、キオクシア社のカードが入札参加できない内容になっている。
ところが、キオクシア社のカードを入札参加製品に指定した2017年からは、仕様書の内容が大きく変化した。SDカードの規格に関する文章は「一度記録した画像データはデジタルカメラ上では上書き、編集、複写及び削除が不可能なもの」だけになったのだ。PCでの画像編集には一切触れていない。