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「映像記録が消去された」大阪の風営法違反事件

 2012年に摘発された大阪市内のクラブ「NOON」の風営法違反事件では、内偵時に曽根崎署員が店内をビデオカメラなどで撮影した。公判では、映像記録が消去されていたことが明るみとなった。被告人の弁護団長を務めた弁護士法人・響の西川研一代表弁護士は言う。

「(改ざん可能なSDカードが容認されるということは)重要な証拠が簡単に消去できてしまう、ということが起こりえるということです。被告人の防御権、争う権利をどのように考えているのか。警察・検察が真実に基づいて真犯人に迫る努力をし、それに対して弁護側も防御権を行使していく。そうした当事者主義のもとで初めて裁判は成り立ちます。しかし、出てきた証拠が真実ではない可能性があるなら、その根本が覆される気がします」

©iStock.com

「写真の順序がネガと入れ替えられていた」日野町事件

 刑事弁護の第一人者とされる佐藤博史弁護士は、2018年7月に再審開始の決定が出た滋賀・日野町事件を例に挙げた。

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 1984年に起きたこの事件では、酒店経営の女性が殺害され、手提げ金庫が奪われた。警察は、「自白した」として常連客だった男性を逮捕したが、男性は公判で無罪を主張。強盗殺人罪で無期懲役が確定後は、服役中に病死した男性の遺族が裁判のやり直しを求めていた。

 この事件とSDカード問題はどうつながっているのか。佐藤弁護士が言う。

「日野町事件」で大津地裁が再審開始を認める決定をした(2018年7月11日) ©時事通信社

「再審請求審では、元被告が奪った金庫を捨てた場所に捜査員を案内した際のネガが検察から開示されました。実況見分調書は、犯人しか知りえない金庫の投棄現場にたどり着くまでを19枚の写真で組み立て、自白の信用性を担保する証拠とされていました。ところが、弁護団がネガを分析すると、19枚のうち8枚は現場からの『帰り』に撮影したものだと判明した。調書の写真は入れ替えられていた。つまり、元被告は現場まで警察官に誘導された可能性が出てきたのです。問題のSDカードを捜査側が何らかの意図をもって使用したら、もっと巧妙なことができるでしょう」

 日弁連刑事弁護センターの前委員長、奥村回弁護士はこう指摘した。

「日弁連では、刑事弁護センターが『SDカードに記録された画像については、これを変造することは可能だ』ということを広く伝えてはいます。『問題のカードは通達に適合している』『カードを厳格に管理するから改ざんはあり得ない』という警察庁の弁明は、何の意味もない。万が一の改ざんを防ぐため、そして改ざんがあってもそれに気付くようにするため、一つずつ議論を詰めていく必要があるでしょう」

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取材:本間誠也ほか/取材記者グループ「フロントラインプレス

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