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 大阪府警のこの規格内容に対し、疑問を呈した入札参加業者がいた。この会社は2018年3月末、「東芝メモリ(キオクシア)のカードはデジタルカメラの内蔵メモリーで編集(トリミング、色調整)、複写ができると思われます。規格外ではないでしょうか」という質問書を出したのである。すると、大阪府警は入札仕様書の規格の文言を次のように変更した。

「撮影と同時にSDカード上に一度記録した画像データは、当該SDカード上において上書き及び削除が不可能であること」

 これはどういうことだろうか。「当該SDカード上において」との限定を付すことで、キオクシアのカードを入札から完全に除外せず、「適合品」として入札対象とする道を残したのである。

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 これを受けて、大阪府警の使用物品の入札業務を扱う大阪府総務部契約局は同年4月下旬、予定数量20万枚ものSDカード入札を急きょ、中止した。厳しい目が注がれる中、一度に大量の発注は問題ありとでも判断したのかどうか、年4回に分けて入札する方式に変更した。入札中止の3カ月後に行われた1回目の入札は予定数量を3万5千枚とし、すでに製造中止となっていたものの、市場に在庫があったサンディスク社の製品を調達した。

新潟県警、宮城県警……厳密対応する警察も

 わずか5つの県警に過ぎないものの、キオクシア社のSDカードを他社のカードに変更した警察もある。その入札仕様書の製品規格は、なかなか興味深い。

 新潟県警の文面は、セキュリティ機能として「書き込みが一度きりであり、編集、加工した画像を追記できないこと。また、消去ができず、改ざんが不可能であること」とした。この基準を明示すると、原本カードの画像をデジカメの内蔵メモリーやパソコンに保存した後、新たに加工(書き込み)ができるキオクシア社の製品は不適合となる。

 宮城県警は原画像の改ざんや消去を完全に防ぐため、全国一とも言えるきめ細かな条件を提示している。

「PCで追加画像データの貼り付けが出来ないもの」
「デジタルカメラ等の編集機能を使った加工・編集・複製が出来ないもの」
「一度書き込んだデータの、一切の削除・改変・上書き・名前の変更・画像情報の変更が出来ず、初期化も不可能なもの」

警察庁 ©本間誠也

 全国の警察は、警察庁にならってキオクシア社のカードを容認する都道府県警察と、改ざん防止の観点から不適合とする警察とに分かれているのだ。それでも、刑事裁判を担う弁護士らの懸念は消えない。