今年のアカデミー賞で4冠に輝いた『パラサイト 半地下の家族』。なかでも、非英語圏の映画としては史上初めて作品賞を受賞したことで、「アカデミー賞の歴史が動いた」と大きな話題になっている。

 それでは、外国語映画に作品賞を明け渡す形になった英語圏のメディアは、『パラサイト』の快挙をどのように報じたのだろうか。それぞれの反応を見てみよう。

昨年の“番狂わせ”が『パラサイト』の快挙に繋がった?

 まず明らかなのは、どのメディアも『パラサイト』の受賞に対して惜しみない称賛を送っているということだ。たとえばアメリカのロサンゼルス・タイムズ紙は「アカデミー賞史上、珍しいことが起こった。それは作品賞に、真に受賞すべき映画が選出されたことである」と述べ、歴史的快挙を祝った。

ADVERTISEMENT

 また、イギリスBBCも「外国語映画として初めてアカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト』は歴史に名を残した」と報じている。

『パラサイト』のポン・ジュノ監督 ©getty

 一方で、よく目についたのは、昨年のアカデミー賞での“番狂わせ”が、今回の『パラサイト』の作品賞受賞に繋がったのではないか、との論調だ。2019年の第91回アカデミー賞では、アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』(スペイン語のメキシコ映画)が最有力候補と見られていたが、結局作品賞を受賞したのはアメリカ映画『グリーンブック』だった。

アカデミー賞の変化を指摘する声も

 アメリカの経済メディアQuartz(クオーツ)は、「『パラサイト』の作品賞受賞はアカデミー賞にとって素晴らしい出来事である。特に昨年、秀作『ROMA/ローマ』を抑え、駄作とされたハリウッド映画『グリーンブック』が受賞した経緯を鑑みればなおさらだ」とし、「今回の受賞者を見ると、多様性が確保されたとは言い難いが、少なくとも『パラサイト』の受賞からは、ハリウッド以外の映画を認めようとするアカデミーの意思をくみ取ることができる」と、その変化に言及した。

 また、イギリスのガーディアン紙も同様に、昨年のアカデミー賞について「閉鎖的で、特に人種平等や男女平等について遅れているとの批判が集中した。(※『パラサイト』の受賞は)こうした批判に対して、アカデミー賞の審査員らがNOを突き付けた結果ともいえよう」と報じている。