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2020/02/14

「単に良い作品だったから受賞できたと考えるのは間違っている」

 アイルランドのアイリッシュ・タイムズ紙は「フランスやドイツ、日本、ロシアなどといった国からではなく、韓国から受賞作品が出た」ことに注目しながらも、「単に良い作品だったから受賞できたと考えるのは間違っている」と論じている。

「おそらく『パラサイト』が受賞できたのには、Neon(※北米の配給会社)が作品を世に送り出したこと、リリースのタイミングをきちんと図ったこと、口コミを上手く利用したこと、監督そのものにカリスマ性があったこと、およびその通訳者のシャロン・チョイが注目を集めたことなど、その全てが関与している」と、同作の巧みなPR戦略にも目を向けるべきだとしている。

通訳のシャロン・チョイ氏(右)にも注目が集まった ©getty

韓国映画のレベルを底上げした“サムスンの令嬢”

 同紙は「なぜ韓国映画が台頭してきているのか」と問いかけながらも、そこに明確な答えを出すことができていない。他方で、アメリカのフォーリン・ポリシー誌は「サムスンの令嬢は『パラサイト』をいかにして勝利に導いたか」と題する記事を掲載し、今回の受賞は「サムスンという強大な組織力、そしてその中にいる女性の力なくしては成し得なかった」と報じている。同誌が注目する「女性」とは、サムスングループの令嬢であるミキー・リー氏だ。

 韓国国内での『パラサイト』の配給会社はCJエンタテイメントだが、同社は韓国の財閥「CJグループ」に属している。CJグループは、そもそもサムスングループの創業者であるイ・ビョンチョル氏によって築かれた企業グループであり、現在は彼の孫に当たるミキー・リー氏が副会長を務めている。そして彼女こそ、本作『パラサイト』のチーフ・プロデューサーなのだ。

アカデミー賞受賞式の様子。マイクの前に立っている女性がミキー・リー氏 ©AFLO

 同誌はミキー・リー氏を、「韓国映画を今ある場所まで引っ張ってきた人物」と評する。サムスンのビジネス多様化のため、カリフォルニアに送られたミキー・リー氏は、1995年にアメリカの映画製作会社ドリームワークスへ3億ドルを投資し、それと引き換えに「アジアにおけるドリームワークスの頒布権および韓国の映画制作に携わる人間がドリームワークスで研修を受ける権利」を獲得した。これこそが「現在の韓国映画界の強さの根底にある」のだという。