イラスト 中村紋子

 舞台「ビリー・エリオット」を観た感動がまだ醒めやらないワ。ボク、ミュージカルは結構観ているけどこれは迫力がすごい。別格ね! この夏は黒柳さんのコンサート、ベイスターズ観戦とライヴづいていて、極め付きがコレね。

 舞台は八〇年代、サッチャー政権下のイギリス。労働争議の続く炭坑町で、炭鉱夫の息子ビリーがバレエに夢中になるの。バレエは上流階級の文化だし、男の子がやることへの偏見も強い。でも争議の敗色が濃くなっていく中、労働者達は次第にビリーを応援し始めるのね。ロイヤル・バレエ学校を受験できるように貧しい彼らがカンパをする。大人達はビリーの夢に自分達の未来を託すわけだけれど、その未来とはもはや労働者対資本家といった二者択一的な単純なものじゃないの。大学時代に七〇年安保を経験したボクの目には、物語と、三池炭鉱労働争議をはじめとする日本の近現代史とが重なって見えてきたワ。

 ビリー役は変声期前の男の子五人が交代で演じる。オーディションでは子供達に一年以上も稽古をつけながら、もともとの技術だけでなく成長過程を評価したそう。一人一人が全然違う個性で、どのビリーも観てみたい! と思わせる魅力がある。あと、よかったのはバレエ学校の女の子達。太めの子も堂々と楽しそうに踊っていて、とてもかわいらしかった。多様な子供達がそのままの姿でそれぞれに光ってるのよね。

ADVERTISEMENT

 最近、カリキュラムの忙しさや予算の関係で、学校行事から舞台鑑賞が消えつつある。でも、ネットでなんでも見られてしまう時代だからこそ、子供達には実際にその場に足を運び、肌で感じる体験を大切にしてほしい。演劇、コンサート、スポーツ……。夏休みなどを利用して、子供と“ホンモノ”に触れてみてはいかが? きっとはかり知れない教育効果があると思うワ。