おそらくこの先ジャンルというものからは離れていくと思う
――『ミッドサマー』という映画をホラー映画だと考えていないとおっしゃいましたが、観客から見るとやはり大きな恐怖をもたらす作品ですし、ついそれを期待してしまいます。監督は、今後もホラー的な要素や不穏さを一貫して自作に取り入れていかれるのか、それともまったく別のジャンルに進出する可能性もありますか。
アリ・アスター 作家として同じことをくりかえしたくないし、どの作品でも同じ雰囲気が漂うなんて事態は避けたいと思う。ただ脅威や恐怖みたいなものは作家として自然に出てきてしまうものでもあるから、ある程度はまた顔を出すかもしれない。とはいえ、そういうものから一歩離れてみたいとは思っています。すぐに、とはいかないかもしれないけれど。
――前作『ヘレディタリー』は世界中で本当に多くの観客に受け入れられましたよね。『ミッドサマー』もアーティスティックな作風であると同時に強いエンタテインメント性も兼ね備えていると思います。今後、大規模な予算を使ったジャンル映画を手がける可能性も考えていらっしゃいますか?
アリ・アスター 大きな製作費には興味があります。より野心的な映画作りを試みることができるから。正直なところ、『ヘレディタリー』と『ミッドサマー』がどちらも商業的な成功を収めたことには非常に驚きました。ある意味で、『ヘレディタリー』がホラーというジャンルに属していたことは幸運だったといえるでしょう。ホラー映画の熱狂的なファンは世界中に存在し、彼らの忠誠心はとても強いから(笑)。自分としては常に語るべき物語に忠実でありたい。題材がより普遍的なものであれば商業性は高まるでしょう。ただ、おそらくこの先ジャンルというものからは離れていくと思う。ホラーというジャンルでついていたファンは減っていくかもしれません。
――最後に『ミッドサマー』についてもう少しだけ。映画を見ていてメロドラマ的な高揚感を感じると同時に、音楽の使い方などにどこかオペラ的な感覚を抱いたのですが、そのような意図は念頭にあったでしょうか。
アリ・アスター メロドラマは大好きです。この映画を作るうえでメロドラマという考えはたしかに頭にあったし、何よりも、エンディングで大きなカタルシスを迎えるようなオペラティック(壮大)な作品にしたかった。あるいは交響曲のような作品と言えるかもしれない。だからそう感じてもらえたならとても嬉しいです。
Ari Aster/1986年生まれ。長編第1作『ヘレディタリー/継承』が批評家に激賞され、ホラー映画では異例の大ヒットを記録した。
INFORMATION
映画『ミッドサマー』
https://www.phantom-film.com/midsommar/