未曾有の金融危機をエンタメとして描き切る『国家が破産する日』
民主化後、経済も右肩上がりの状況下で、1997年には、かつて軍政時代に弾圧されていた金大中が大統領に当選する。奇しくもその年に、「IMF危機」と呼ばれる通貨危機が訪れた。
『国家が破産する日』(チェ・グクヒ監督、2018年)は、韓国銀行と政府、そしてじわじわと被害を受ける町工場の経営者、危機をチャンスとばかりに一攫千金を狙う金融コンサルタントという、立場の違う三者の動きを通して、当時の混乱を描き出している(2020年4月8日にDVDリリース)。多面的な視点によって、経済という目に見えない動きをドラマチックに描くという難題を乗り越えているといえる。差し迫る状況を政府は甘く見積もり、不都合な事実は隠蔽し、みるみるうちに事態は悪化する。
文大統領は「映画産業を支援」「干渉はしない」と発言
この頃IMFと政府によって急激に行われた規制緩和などが、『パラサイト』でも描かれたような格差社会の起点になっている。その後、保守派による揺り戻しがあり、朴正煕の娘である朴槿恵政権下では、国の意に沿わない文化人の「ブラックリスト」を作っていたことがいまでは判明している(ソン・ガンホもリストに入っていたひとりだ)。
しかし、スキャンダルののち巻き起こった社会運動により、2017年に政権は変わった。今年2月20日、文在寅大統領はポン・ジュノ監督や『パラサイト』出演者らとの昼食会で、「映画産業を支援する」と同時に「干渉は絶対しない」と述べている。
「社会が進歩する」とはまさにこういうことだと思ってしまうが、現実はこれでハッピーエンドとはならない。進歩の追求に終わりはなく、これからも韓国社会は激しく動き続けるだろう。
では、日本はどうだろうか? 少なくとも、今回挙げた映画にこれからのヒントがたくさん詰まっているのは言うまでもない。