大手不動産会社・積水ハウスが55億円を騙し取られ、存在が注目された地面師。

 “地主”に成りすます人間を用意し、書類を偽造、企業や不動産業者に架空売却して代金を騙し取る地面師は、昔から存在する古典的詐欺集団である。

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 近年は、地主の高齢化や不在地主の増加、そして都心の地価高騰を背景に地面師が再び増え、ここ数年、都内だけで数十件の被害が起きているという。

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 積水ハウス事件では2018年秋以降に17名が逮捕され、20年2月12日には、積水ハウス事件で逮捕された主犯格が、東京・渋谷の土地を巡る地面師事件に関わっていたとして再逮捕された。

この地面師の最大の未解決事件が「新橋白骨事件」である。

好立地物件を所有者する女性が、白骨死体で発見された

 東京・新橋――。

 JR新橋駅から愛宕方面へ向かうと、2014年に開通した新橋と虎ノ門を結ぶ通称マッカーサー道路(環状2号線)に出る。広い幹線道路の両側には新しいビルが次々と建つが、裏へ行けば古い雑居ビルなどが所々に残る。

 その古い建物群の一角で、60歳の資産家女性Aさんの白骨死体が発見されたのは2016年秋のことだった。

 Aさんが1960年に相続した薄ピンクの4階建てビルがある一角も、古い家屋や更地などで占められ、再開発を目論む不動産業者が関心を示すことになる。

Aさんが所有していた薄ピンク色の4階建てビル。2020年2月撮影(著者提供)

「不動産業者が代わる代わるAさんのところに日参して売却を求め、地上げ屋が群がり、地面師に連なるブローカーまで出てきたのです。しかしAさんはビルを売るつもりはなく、誰が来ても、何を言っても話を聞こうとしませんでした。そしてある日突然、行方が分からなくなったのです」(事情を知る関係者)