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2020/02/28

 Aさんが行方不明になった後、地面師は架空売却に着手したと見られる。

 登記簿謄本では、Aさんの住所がなぜか新橋から大田区大森の賃貸アパートに移転され、その後3カ月の間に、ビルの所有権は木更津市の会社や相模原市の会社などを転々として、新橋の商事会社が手に入れた。

騙された大手不動産会社は勝訴したが……

 15年7月、この商事会社が売り抜けに成功した先が、全国でも売り上げ上位の大手不動産会社だった。

「大手不動産会社は、“一角を50億で地上げする”というブローカーの話に乗り、地上げが終わったという触れ込みのAさんのビルを十数億円で買い取りました。しかし他の場所は地上げがろくに進まず、1年後にAさんの白骨死体が発見され、騙されたことを知ったのです」(同)

 商事会社の新橋の事務所には、積水ハウス事件で逮捕された複数の地面師が出入りしていた。詐欺を知り、大手不動産会社は損害賠償を求めて売却元になった新橋の商事会社を訴え、勝訴したが、金が戻ることはないという。

「十数億円を手に入れた連中は、新たに千葉県の地上げに金を投じ、何台もベンツを購入し、一人は娘のためにマンションを買って、使い切ったのです。そして商事会社は新橋の事務所をたたみ、関係者らは行方知れずになりました」(同)

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なぜ大手が詐欺師に騙されるのか?

 被害者の大手不動産会社が地場のブローカーを信じた理由の1つが、ブローカーの側に、信託会社の社長を務め、大手不動産会社の幹部とパイプのあった60代の男性弁護士が出てきたからだという。しかし、この弁護士も消えることになった。

「弁護士はブローカー連中と組み、相手を信用させる役となり、長い間、甘い汁を吸ってきたようです。しかしこの一件が訴訟沙汰になると、信託会社の社長を解任されました。

 しかもこれには暴力団の金も流れ込み、金の回収を巡って弁護士が追及の矢面に立たされたのです。弁護士は弁護士登録を取り消し、自己破産して、行方をくらましました。しかし逃げ切れないでしょう」(同)

 Aさんが消え、白骨死体で発見されるまでの経緯には謎が多い。