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2020/03/01

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 国際, 政治

 記事によると血糖値を下げ、消化機能、心臓機能、神経機能を改善する上で明確な効果を発揮するといい、「特に子供たちの栄養補充にとても良い」とある。

 ニュースが配信されたのは「主体109(2020)年2月13日」。新型肺炎が広がる真っ最中に、乳酸菌を使った食品が発表されたわけだ。

 日本でも新型コロナウイルス対策として免疫力を上げる効果があるとされるヨーグルトや乳酸菌飲料の売れ行きが伸びているというが、北朝鮮でも新型コロナウイルス対策でヨーグルト飲料が飲まれているのかもしれない。

 朝鮮半島からの漂流物は以前、韓国の牛乳パックや豆腐の賞味期限から割り出したところ、1週間から10日ほどという想像以上に速いペースで日本に流れ着くケースもみられる。北朝鮮でも新型肺炎騒動でこれらの乳酸菌入り食品が薬の代替品となっている可能性もある。

「5・1健康飲料総合工場」の製品紹介(北朝鮮の出版物「私の物が一番だよ」より)

ヨーグルトと金正恩

 資料に当たってみると、興味深い「ヨーグルト神話」を見つけることができた。

 時は2014年6月1日。孤児収容施設の平壌愛育院を金正恩が訪問した際のエピソードだ。

「園児たちに食べさせようと、キジ肉と果物ヨーグルトまで持ってきた敬愛する元帥様は、自らヨーグルトの容器にストローも差し込んでくれ、国際児童節を迎えた彼らに実の親の絆を注いでくださった。(中略)ヨーグルトは『園児がご飯を食べた後、食べさせるべきだ』と丁寧に教えてくれた」(北朝鮮の対外情報サイト「朝鮮の今日」より)

百貨店を視察する金正恩氏 ©AFLO

 こうした神話から、栄養価の高いヨーグルトはいわゆる“元帥推し”で大量生産されるようになり、ここ数年で人民に普及していったと考えるのが自然ではないだろうか。豊富な種類のヨーグルトがあることで知られるスイスに留学の経験がある金正恩の指導によるものであることは不自然ではない。

 前出の宮塚氏は、今回の事象について次のように解説する。

「新型コロナウイルスが流行し、中国との国境を封鎖した影響で、物量が止まっており、北朝鮮では品不足が深刻化している。乳酸菌を多く含むキムチが癌にも効く万能薬のように食べられている北朝鮮では、新型コロナウイルスの感染予防のために、乳製品を積極的に摂取することは奨励されていてもおかしくない」

海岸で見つけた「カルシウム牛乳」の空き容器(筆者撮影)

 宮塚氏は平壌出身の20代脱北者の男性に現地でのヨーグルトの実情を聞いてくれた。

「北朝鮮でもヨーグルトのような乳製品は子供の身体に良いという認識でよく食べていました。韓国ほど種類は多くはないが、砂糖は入っておらず酸っぱい味だった」(脱北者の男性)