そもそも、日本は新型コロナウイルスの発生初期から、常に感染者数では上位に位置づけていた。それが、なぜ、いまこうした措置を取られ始めるのか。
「ウイルス培養器」のイメージができた
転機は世界中からの乗客・乗員3711人のうち700人以上が感染したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での日本政府の対応があったといわざるをえない。
2月5日に乗客の感染が発覚後に横浜港に停泊した同号に対し、日本政府は船上での隔離措置を取った。だが、当初はその対応に理解を示していた米国疾病予防管理センター(CDC)が2月18日には対策が「不十分だった」と発表。隔離期間終了前に米政府など各国政府が航空機で自国民を「救出」する事態となった。
国際社会の批判を集めたのは、検査で日々、感染者が急速に増えていったことがきっかけだ。そこに、乗客よりも劣悪な環境に置かれていた乗員たちのネットを通じた告発が加わった。すし詰め状態で調理、寝泊まりをする乗員の感染を放置し、船内で感染者を量産する「ウイルス培養器」のイメージができあがった。神戸大の医師が乗り込み、状況をさらに危機的に伝えたことで、バッシングは広がった。
ミスは隔離対策そのものより透明性に
事実は少し違う。厚生労働省は後日、感染症の対策措置を取っていることを発表している。国立感染症研究所が後日出した報告書によれば、大半の感染は隔離前に起きており、隔離は追加の感染をゼロにすることはできなくとも、抑制することはできた、と評価した。
だが、国立感染症研究所の報告書が出たのは隔離が終わって下船の始まった19日で、厚生労働省が船内の感染症対策について公表したのは翌20日。日本政府へのバッシングが一巡したあとだ。報道は、報告書が強調した「抑制」の部分よりもゼロに防げなかった点を強調することになった。
船で感染が広がった一義的な責任は、乗客の感染後もパーティーを開くなどしていた船の対応にあるともいえる。だが、そんな事実が報道に出始めたのは、ほとんどが下船後。一度定着した評価を覆すのが難しいことはPRの世界では常識だ。日本政府のミスは、隔離対策そのものよりも、その透明性にあったわけだ。