「退職代行サービス」が会社を辞めたいと考える人の間で話題を呼んでいる。上司のパワハラや職場の環境、同僚とのミスマッチなど、職場を変える理由は人それぞれだ。しかしいざ退職を決意しても、自力で実行に移せない人も少なくないのだという。たとえみずから退職を申し出ても、上司に突っぱねられたり激しい嫌がらせを受けたりする可能性も考えられる。

 そんな悩める社会人に救いの手を差し伸べるのが、退職代行サービス。退職代行サービスでは、退職の過程で必要な連絡を代行業者が当事者の代わりに行ってくれる。基本的に当事者は会社と直接連絡を取る必要がなくなるため、退職代行サービスは「仕事を辞める」と言い出すことで生じる厄介ごとを肩代わりしてくれる、いわば「心の保険」ともいえるものだ。

 退職代行サービスを展開するONE-BYE合同会社代表・桐畑昴氏の著書『明日から会社に行かなくていい 退職代行マニュアル』(扶桑社)より一部を抜粋し、その利用者の実情を紹介する。

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退職代行は労働者のお守り

 雇ってもらってお金をもらっているのに、嫌なことがあるくらいで辞めるのはよくないとか、退職くらい自分でするべきとか、いろいろと思うところはありました。

 ただ、会社が労働者を選ぶ権利があるように、労働者も会社を選ぶ権利があるはずです。

 退職代行業者を使うことによって、ストレスなく、再び自分の働き方、生き方を見つめ直すことができました。

 退職後に転職活動をはじめ、運良く今は優しい上司のもと、楽しい職場で働いています。

©iStock.com

 これは、弊社を利用された方からいただいたメッセージです。この方のように、会社を辞めることに罪悪感を抱く人は少なくありません。日本には「長く続けるのが美徳」という考え方が浸透していますし、「逃げるのはダメなことだ」と教えられてきました。

 動物は命の危機に直面すると、自分の身を守るためにその場からすぐに逃げ出します。しかし、人間は周りへの影響を考えすぎて、自分の行動にストップをかけてしまうことがあります。でも、動物と同じように人間だって逃げるべきときに逃げなければ、過労死や自殺など命の危機にさらされます。

 私は職場で追い詰められてしまった人に、こうお伝えしたいのです。

「安心して逃げてください。サポートしますから」

 私は退職代行というのは、すべての働く人にとっての「武器」であり、「お守り」のような存在になると思っています。実際に代行業者を使うかどうかは別にして、いざというときに、「1万円払えば会社とサヨナラできる」ということを知っているだけで、激務やパワハラに苦しんでいるなかでも精神的に楽になれるのではないでしょうか。