「共感しやすいか」全く違う“キャラクターの色”
【主演】 向井理 対 竹内涼真
ふたりとも、事件に巻き込まれていく主人公にふさわしい透明感と、事態を見つめ考察していく目線が印象的。
ただ『テセウスの船』では、竹内演じる主人公とともに事件の真相に迫っていく鈴木亮平の存在も大きい。バディ要素も入って、ふたりの会話の妙味がより親しみやすさを作り出している。最初は 、鈴木演じる主人公の父に犯人疑惑があったのが、信頼できる味方になるところは前半の見どころだった。
【女性キャスト】 仲間由紀恵(主人公の元妻)、仲里依紗(主人公の昔なじみ) 対 榮倉奈々(主人公の母)、上野樹里(主人公の妻)
『10の秘密』で仲間由紀恵が演じる、向井理を翻弄する悪女的な役は、堂々たる風格と華がある。仲里依紗のどこか影のある表情とアクションのギャップも面白い。
アクセントの強い仲間と仲の演技に対して、榮倉と上野は等身大の女性をナチュラルに演じている。主人公を包み込む榮倉のあたたかい母親役の笑顔は癒やされる。上野は、現代パートで事件の真相を調べる記者としての毅然とした姿や、主人公に接するビビッドな表情の数々が魅力的。未来、彼女が死んでしまっていることがわかっている分、主人公ともども、視聴者の心も切なくなる。
【あやしい助演】 渡部篤郎、佐野史郎 対 麻生祐未、安藤政信
ミステリーに限ったことではないが、怪優の存在がドラマを盛り上げる。『10の秘密』の渡部篤郎、佐野史郎は安定の演技力を見せている。
『テセウスの船』では、思慮深い大人の女の印象の麻生祐未が特殊メイクであやしい老婆を演じる意外性も話題になっている。真犯人役を演じる安藤政信は映画で活躍してきて、その美しさと確かな演技力で評価を高めてきた。昨今ドラマにも出演するようになり、その新鮮さも視聴者に人気だ。その幼少期を演じる柴崎楓雅も圧倒的な不気味さでポイントが高い。子供が大人顔負けの知性によって禍々しい殺人を行う設定のスリルが、最新7話を盛り上げた。
どちらもテーマは一つだが……
【脚本】 後藤法子(オリジナル) 対 高橋麻紀(原作もの)
映画もドラマも原作がある(ヒットしているとなお)と安心して見る気になる人が多い。反対にオリジナルだと率先して手を出さず、様子見する人も少なくない。
オリジナルと原作ものでは脚本の完成度を比較することは難しいが、『10の秘密』は、ヒット作を多数手掛けるベテラン・後藤法子が込み入った展開を見事にうまく進めている。ただ夫婦の対決を軸にしているとはいえ、たくさんの人物が絡み合い過ぎていることと、場面転換が早く、じっくり見ないとわからなくなってしまう。
対して『テセウスの船』は過去と未来が行ったり来たりするとはいえ、過去の殺人事件の真相を探り阻止するというそれ一本に集中しているので、わかりやすいうえ、主人公を応援しやすい(ナレーションも主人公のモノローグ)。
その点、『10の秘密』は主人公ふくめ、どの人物も秘密があって行動の目的が掴みづらい(それがミステリーになっているわけだが)ため感情移入がしにくいのが難点かもしれない。