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2020/03/08

時代のニーズは確実に「わかりやすさ」

【演出】 映画もやっているベテラン 対 TBSのヒットメーカー   

 カット割りや編集に凝っている『10の秘密』。場面がどんどん変わって、意味深な画が多く、矢継ぎ早にあやしい音楽を流し、雰囲気でカムフラージュするミュージックビデオ的手法が2000年代前後によく見られた感じで、今の時代にフィットしていない印象がある。

『テセウスの船』は時系列が行き来するからこそ、ゆっくり進行し、視聴者を振り落とさない。過去と未来も主要人物は同じで特殊メイクで老けているので、混乱することもない。音楽も、ここぞ! というとき、感情の盛り上がりポイント明示してくれるように入ってくる。

 怪しいところは徹底的に怪しく、家族のあたたかさを見せるところは徹底的に微笑ましく、メリハリがある——。これが退化か進化かはわからないが、時代のニーズは確実に「わかりやすさ」なのである。TwitterやLINE、Instagramによる手短なSNSコミュニケーションの隆盛により、いまの時代、即時性とわかりやすさが求められているのだ。

通好みの『10の秘密』と、見る者を選ばない『テセウスの船』

【主題歌】秋山黄色「モノローグ」 対 Uru「あなたがいることで」

 クライマックス、人気ミュージシャンによる主題歌がかかってドラマ性をしっかり盛り上げてくれるのが人気ドラマの共通点だ。

『テセウスの船』は主人公が愛する者のために奮闘している感と主題歌がマッチしているうえ、音量も大きく、歌詞がシーンに合っていて、ナレーションと同じような役割を果たしている。ドラマの展開とともに、視聴者の感情を盛り上げているのだ。

『10の秘密』も同じく、クライマックスで主題歌がかかるが、音量やや控えめ。劇伴も含め、画と音楽が入り混じったつくりは、それはそれで完成度が高い。だが、「わかりやすさ」が好まれる時代では、これまた見る者を選んでしまう。一昔前はかっこいいものが好かれていたのだが……。

【時間帯】 火曜9時 対 日曜9時   

 ドラマには視聴習慣というものがあり、代表的なものにNHK・朝ドラがある。「話題になっているな」となんとなくチャンネルを合わせて見る習慣ができることはドラマの視聴率や注目度を上げるために必要だ。池井戸潤原作『半沢直樹』など、高視聴率ドラマを多く輩出した日曜劇場(日曜9時)は現在はブランド化していると言える。

 一方、火曜9時は火曜10時から時間帯を変更したりして安定しないこともあり、低迷中。作品の内容以前に、放送時間帯の違いも重要かもしれない。

大人気ドラマ『半沢直樹』も同じく日曜劇場の枠でで放送された(DVDジャケットより)

 2作とも、クライマックスに向かって、あの手、この手を駆使して、実は、実は……と次々新展開を見せて、視聴者を混乱させていくのだが、簡単にシロクロつけず、淡々と進んでいく、通好みの『10の秘密』と、見る者を選ばない、家族でも楽しめる『テセウスの船』は大きく違う。