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「原発事故で夫の浮気癖が激しくなった」ある原発事務員の女性が語る3.11からの9年間

離婚をしたことは良かったが……

2020/03/11
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以前よりも金回りがよくなったことで……

 実は、夫の浮気癖は震災がきっかけではないという。結婚して2週間後、「俺は遊ぶから」と言われた。すぐに浮気が発覚したが、そのときも携帯電話の履歴でわかった。出会って数ヶ月後の結婚だったが、浮気癖がなくなることを期待はしていた。しかし、その後も、夫の浮気癖が続く――。

 震災後、人口の多いいわき市に移り住み、以前よりも金回りがよくなったことで、夫の浮気に拍車がかかったのではないか。真美さんはそう考えている。しまいには、まるで家政婦のような扱いを受けるようになった。

「逃げ場がなくなると、夫は、手を出すことがありました。髪を持って引きずられたこともあります。震災前は、原発の運転員だったので、出会いはなく、遊ぶにも限度があったんですが、震災後は営業の仕事をするようになったんです。震災があったから遊べたんでしょう。

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 私は我慢してきました。自分に自信がなかったので……。でも、もう子どもも『あんなバカ、いらない』と言っていました。離婚するとき、相手の女性にも会いました。私は相手の女性に『過ちもあるでしょうから、どうぞ、どうぞ』と。彼女にも子どもがいましたが、『私には、あなたの子どもはどうでもいい。私は、自分の子どもを守る』って言いました」

「むこう(双葉郡)に行くのは抵抗があるようです」

 こうして2年前に離婚した。離婚時の財産分与でいわき市に建てた自宅があり、現在は子どもと一緒に住んでいる。仕事は平日、広野町まで通勤している。工業団地内の会社で事務員をしている。常磐自動車道を4車線に拡張工事している関連会社だ。

福島第二原発の建屋(2013年10月撮影)

「いわき市内から、(広野町などの)双葉郡に仕事で通うのは人気がないです。こっち(いわき市)からむこう(双葉郡)に行くのは抵抗があるようです。放射線は目に見えないからでしょう。そのため、原発関連会社以外は、常に人手不足です。募集してもなかなか集まりません。だから、外国人(技能実習生)を雇っています」

 事故を起こした原発関連では、オンサイトの作業員であったり、オフサイトの除染作業などには、危険手当がつくために報酬が良い。しかし、原発以外の仕事には、同じ地域の仕事でも危険手当の上乗せはない。同じ地域で同じような仕事をするならば、危険手当があったほうがいいと考えるのは自然だ。

 福島県内の外国人技能実習生はどのくらいいるのか。福島労働局の調査(2019年10月末現在)によると、外国人労働者は9548人(前年比17.4%増)。国籍別ではベトナムが全体の31.9%でもっとも多く、ついで中国(20.5%)、フィリピン(16.5%)などとなっている。在留資格別だと「技能実習生」が4320人で最多だ。