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へたなプログラムも「味」になるように

 私は、「どうやったら楽しさを取り戻せるのかな」と考察して、「へたくそでもいい。その人のやりたいことを自由にできたほうがいい」ということに行き着きました。それを実現できれば、子供のころのものづくりの感覚にもどせます。

 そして、プログラムで実現させようと設計したのが、先ほどあげたソフトウエア・プラットフォームです。「どんなプログラムが組み込まれても、プログラムを邪魔しないし、味になる」というプラットフォームがあれば、みんなが一生懸命にプログラムを書いてみたくなります。

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 プログラミングを覚えたての小学生が書いたプログラムもロボットの動きの味になるとしたら、きっと、ものづくりが楽しくなります。そういうかたちで、ものづくりの根本に立ちもどれるようなプラットフォームにしたいと思っています。

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 こういうプラットフォームをつくるために、ずっと研究を重ねてきました。

 修士2年のときには、脳の前頭前野の領域の細胞を真似した機械学習の手法のようなものを研究しました。わかりやすく言うと、学習済みのものも、学習していないものも、うまく調停してひとつのシステムとして動かす手法です。

 たとえば、80パーセントの精度が出せる識別器と、85パーセントの精度が出せる識別器の二つを用意して、それを調停することで、87パーセントの精度が出せるというものです。

みんなが参加することの大切さ

 ほかにも、サッカーをするプログラムAと、サッカーをするプログラムBを入れると、サッカーをするプログラムCができます。できあがったプログラムCは、プログラムAよりも、プログラムBよりも、少し上手にサッカーができる。そんなプログラムなら、書いてみたいと思うのではないでしょうか。

 この修士2年のときの研究を前提にしたのが、ソフトウエア・プラットフォームです。

 上手なプログラムにへたなプログラムが入ってきたときに、上手なプログラムよりほんの少しレベルの高いプログラムができあがる仕組みです。

 この仕組みがあれば、みんなが自由にプログラムを書いて、ロボットに入れたくなります。へたなプログラムを入れても、ロボットのプログラムを邪魔しないで、プログラムに新たな味を加えてくれます。

 自分以外の人がプログラムを加えてくれますから、自分だけでつくっていたら一生見ることができなかった世界が見えてきます。その人がプログラムに参加してくれたドラえもんと、参加してくれなかったドラえもんでは、おそらく、まったく別のドラえもんになっています。

 みんなが参加してつくることで、ドラえもんはいろいろな味をもつようになるのです。