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「ドラえもん」づくりの根幹は、不完全さを支え合うことだった

『ドラえもんを本気でつくる』より #2

2020/03/21
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専門分野の掛け算が新たな価値を生む

 高校生や大学生からインタビューを受けると、必ずと言っていいほど、

「やりたいことがない学生にアドバイスしてください」

 と言われます。

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 そんなときの私の提案は、「ダーツで決めよう」です。

 ダーツではなく、くじでも何でもいいのですが、暫定的に何かを決めて、とにかくそれをやってみるのです。それだけでいいのではないかと思っています。

 私はドラえもんをつくりたいと思っていますが、なぜつくりたいのかをうまく説明することができません。たまたま与えられたものでしかないと思います。でも、与えられたものを軸にして、ほかのことを整理してきたことで、どんどん考えが広がってきました。

 ある後輩と飲みにいったときに、

「やりたいことがなくて、困っているんですけど」

 と相談を受けました。私は、

「ここに居酒屋のメニューがあります。目を閉じて、メニューを指差してください。あなたは、指を差したものの専門家です。1週間かけて、それを徹底的に研究してください」

 と言いました。

 やってもらったら、あろうことか「480円」を指差していました。

 しかたないので、

「じゃあ、1週間後までに480円の専門家になってね」

 と言いました。

 1週間後、後輩は、

「480円の専門家になってきました」

 と私に言ったのです。そして、こう続けました。

「480円で買える、あらゆるものを調べてきました。どんな人のどんな悩み事でも480円で解決策が出せます」

©iStock.com

人は誰もが何かの専門家になれる

 1週間かけて調べつづけるだけで、何かの専門家になれるし、特技をもてるということがほんとうによくわかりました。

 1週間で専門家になれるのであれば、それを10週間やると10個の専門家になれます。

 その10個の組み合わせの専門家は、おそらく日本にはいないはずです。

 たとえば、1週間で100人に1人くらいのレベルになったとします。もし、それくらいの能力を2つ獲得したら、両方ともができるという意味では1万人に1人の人材になれるはずです。

 同じように3つ組み合わせたら、100万人に1人、4つ合わせたら1億人に1人、とどんどん増えていって、たとえば10個組み合わせるなどということになったら、おそらく同じスキルをもっている人は、ほかにいないというレベルになるはずです。