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「検査=善」と考えるのは、「思い込み(ドグマ)」に過ぎないのです。その思い込みを人びとに植え付けてしまったのは、不必要な検査を無自覚に行ってきた医師たちであり、そのツケが回っているとも言えるのですが──少なくともエビデンスに基づく医療(EBM)が言われている現代で、科学者でもあるべき医師は、思い込みや裏付けのない信念に基づいて、やみくもに発言をするべきではないと思います。

医療報道は一つ間違えると、多くの人の命を奪いかねない

 そして、テレビをはじめとするマスメディアも、思い込みで「検査体制を拡充すべき」などと主張をするのは絶対にやめるべきです。医療報道は一つ間違えると、人の命に関わります。もし何かを主張するとしても、「感染症に詳しい医師」に語らせる前に、実際に臨床現場で新型コロナウイルスと闘っている本物の感染症専門医の意見(セカンドオピニオン)を聞くべきです。

 ほんらいは本物の感染症専門医にテレビに出てもらうべきだと思うのですが、彼らは重症患者の診療や地域での感染対策で忙しく、それどころではないはずです。しかし、最前線で未知のウイルスの脅威から人びとを守ろうと奮闘している医療従事者がどんな意見を持ち、それをサポートするために何が必要なのかを吸い上げ、広く社会に伝えることこそが、今、マスメディアに求められていることなのではないでしょうか。

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 もちろんそれは、政府も同じです。臨床現場で奮闘する感染症専門医を始めとする医療従事者の意見も聞かずに、場当たり的な政策を打ち出したのだとしたら大問題です。そうしたことに対して、マスメディアや野党は大いに怒り、批判すべきだと私も思います。

 しかし、マスメディアが臨床現場で奮闘する医療従事者の足を引っ張り、感染拡大や医療崩壊を助長することになったら、その罪の大きさは計り知れません。繰り返し言いますが、医療報道は一つ間違えると、多くの人の命を奪うことにもなりかねないのです。とくにセンセーショナルな主張を繰り返したワイドショーの関係者は、新型コロナウイルスに関する報道のあり方を猛省し、見直すべきだと私は考えます。