「クルーズ船で2週間、下船して向かった韓国で2週間、そして日本に帰ってきて、また2週間ですわ」
新型コロナウィルスの国内感染者数が1000人を超えた。その7割を占めるのが、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での集団感染だ。すでに6人の死者を出し、感染者数は700人近くに上る。
この船に韓国籍の妻と2人で乗り込んでいた平沢保人さん(64)は、本来のクルーズ旅が終わるはずの予定日から1か月が過ぎた3月4日の夜になってようやく、住み慣れた大阪市内の自宅に戻った。
それでも憂いは消えない。
検査は「陰性」だったが……
クルーズ船は船内隔離の2週間を終えた2月19日から21日にかけて乗客約1000人が下船したが、その翌22日に栃木県の60代の女性の感染が判明したのをはじめ、5県6人の下船客から感染が確認された。オーストラリアや米国など各国のチャーター機で帰国した外国人客からも陽性の確認が相次いだ。
これに対して平沢さんは、船内隔離が終了する間際の2月18日の深夜に下船。韓国籍の妻を含む6人の韓国人乗客とともに大統領専用機で翌日未明に羽田空港からソウルに飛ぶと、仁川国際空港近くで50室もの陰圧隔離室を備えた国立の検疫所に移された。
その一室に妻と別々に入り、2度目となる14日間の隔離生活を過ごした。
クルーズ船内で受けたウィルス検査の結果は聞かずに下船したが、検疫所での隔離前と後にそれぞれ受けた検査ではいずれも「陰性」で、韓国政府の厚生労働省にあたる保健福祉部の長官名で発行された証明書も手にした。