感染拡大が進む新型コロナウイルスは、日本という国家が抱える課題を浮き彫りにした。日本政府の初期対応は到底、適切とはいえず、いたずらに感染者の拡大を許している。2月14日に公表された時事通信の世論調査によれば、安倍内閣の支持率は前月比1.8ポイント減の38.6%、不支持率は同2.8ポイント増の39.8%。1年6カ月ぶりに、不支持率が支持率を上回った。

 今回、明らかになったのは法律の不備である。その一例が、政府が新型コロナウイルスを感染症法の「指定感染症」に指定した際の経緯だ。1月28日に閣議決定されたことで、自治体による入院措置や就業制限が可能になったものの、10日間の告知期間を設けなければならず、当初、実際に施行されるのは2月7日だとされた。猛烈な速度で感染範囲を広げる新型ウイルスを前に、あまりに遅すぎる対応と言わざるを得ない。

安倍晋三首相 ©JMPA

時代遅れの検疫法を残してきたツケ

 ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「こうした法律の不備は、2009年に203人もの犠牲者を出した新型インフルエンザの際にも露呈していました」と指摘する。

 いまに至るまで尾を引いている、新型インフルエンザ発生の際の問題点について櫻井氏が語る。 

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 当時、新型インフルエンザに対応していたのは検疫法だ。これは戦後まもない1951年(昭和26年)に制定された法律であり、21世紀型の大規模感染症に対応するには時代遅れの面は否めなかった。

櫻井よしこ氏

「そのころ、国会で検疫法の改正に向けた動きがありました。ところが、さんざん議論を重ねたにもかかわらず、当時の鳩山由紀夫政権は煮え切らず、半世紀以上前に作られた法律がほぼ残ってしまい、結果として多くの犠牲者を出してしまったのです」

 櫻井氏はこのときの「ツケ」が今回まわってきていると指摘する。