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 もう一つは障害者や重病の患者など、フライト中に座れない人が使用するストレッチャー(簡易ベッド)だ。利用には当然診断書が必要になる。エコノミークラスの座席6席分を占拠することになり、高額のストレッチャー代が別途請求される(JALストレッチャー、簡易ベッドをご利用のお客さま https://www.jal.co.jp/jalpri/pre-application/stretcher.html)。

 そして、唯一一般人が利用できる寝台が、民間航空機で世界最高に贅沢だといわれるエティハド航空のA380に搭載されたザ・レジデンスである。11.4平方メートルの個室は、リビングルーム、バスルーム、寝室と分かれている。だが、デリーからアブダビ経由パリまでのフライト(デリー~アブダビはアパートメントとよばれるファーストクラス)で片道84万円という金額が徴収される。

エティハド航空 ザ・レジデンス ©getty

 では、なぜ機内寝台は普及していないのだろうか。最大の理由は、国際的な規定により、乗客は離着陸時および航空機が地上を移動している際は座席に座っている必要があることだ。床に対して水平なベッドでは、大きな航空事故のときにかかる重力に対して身体を支えきれない。そのため、ファーストクラスやビジネスクラスでも、これらのときには、必ず座席をほぼ垂直な形状にする必要がある。もし、寝台を設置するなら、座席とはまったく別のスペースに設置する必要があるため、その分座席を取り外さなければならず、収益減につながる点については先に示したとおりだ。それでも航空機の性能向上にともない、15時間以上のフライトが珍しくなくなり、機内での寝台設置へのニーズは高まる傾向にある。

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寝台だけでなく、子どもの遊び場、バー……夢のプランも

 2007年には、ルフトハンザ・ドイツ航空が、長距離路線の貨物室に3段寝台を設置するプランを発表している(http://aircrewbuzz.blogspot.com/2007/07/lufthansas-economy-sleepers-class-idea.html)。

 また、2018年4月にドイツのハンブルクで開催された「エアクラフト・インテリア・エキスポ2018」で、航空機のシートなどをあつかうフランスのゾディアック社がエアバス社と共同開発した機内寝台のプランを発表した(https://www.airbus.com/newsroom/press-releases/en/2018/04/airbus-and-zodiac-aerospace-enter-into-a-partnership-for-a-new-l.html)。これは、エアバスA330・A350の客室の下部に位置する貨物エリアに寝台や子どもの遊び場、バーなどを設置するものだ。貨物エリアに設置するアイディアは、旅客需要が旺盛な一方、貨物需要が少ない場合、貨物エリアを一部利用してもかまわないと考えるエアラインがあることを想定してのものだった(すでに貨物エリアを利用している例として、ルフトハンザA340-600では、機体後部にトイレが5つ設置されている)。だが、現時点においてこの貨物エリアを利用した寝台は、いずれのエアラインでも実用化されていない。

ゾディアック社がエアバス社と共同開発した機内寝台のモックアップ。客室の床下にある貨物室のエリアを利用している。

 それだけにニュージーランド航空の「スカイネスト」には、航空旅行の「ゲームチェンジャー」となることを期待したい。