南口はちょっと寂しめな空気感?
階段を降りて南口に出ると、こちらにも大きなロータリーがあった。が、北口とは違って立派な駅前広場という雰囲気ではない。人の往来も少なくないし客待ちのタクシーが何台も停まっているし、少し先には比較的新そうなマンションがいくつも建っていたりするのだが、どことなく寂しい空気感。それはきっと、駅周辺のあちこちに空き地があるせいだろう。きっと新しくマンションができたりする予定もあるのだろうか。
「中央線に残された最後の桃源郷か」
豊田駅は終着駅であると同時に始発駅でもある。だから座って都心まで通勤するチャンスも多い。満員電車の苦しみを受けずに済むのだ。それでいて、都心まで1時間足らず。ひととおりのモノや店は揃っているし、きっと家賃とか地価も比較的手ごろだろう。それにイオンモールもあるし。さらに多摩川と浅川に挟まれる土地柄か、自然が豊かで住宅地の雰囲気も悪くない。たまに都会的な猥雑な雰囲気に浸りたいと思ったら立川か八王子に行けば済むという点もいい。もしかすると、豊田駅は中央線にとって最後に残された桃源郷なのかもしれぬ。
もうひとつ豊田駅に朗報がある。3月14日のJR東日本のダイヤ改正で、これまで早朝と深夜には快速ではなく各駅停車が走っていた中央線が、すべて快速に統一されたのだ(各駅停車は日中と同じように三鷹発着になる)。そして豊田行きの終電も少々遅くなり、これまでの0時34分新宿発(1時19分豊田着)から0時40分新宿発(1時22分豊田着)になった。たかが6分と侮ってはならない。0時台も5~10分間隔で豊田行きか高尾行きの中央線快速電車が走る。豊田、遠いようで遠くない、意外と便利な街なのだ。
そう思いながら豊田駅を後にしようと南口の階段を登ろうとしたら、そのすぐ近くに人だかりができていた。なんだなんだと思って近づけば、薬局でマスクを買い求めるひとだかり。お一人さま2点まで。ちょうど夕方の16時ゴロ。が、聞けばいつもあるわけではなくて本当にたまたまそのタイミングで入荷しただけらしい。まさか豊田でマスクに巡り合えるとは、思いもしませんでした……。
写真=鼠入昌史